絵本は物語に絵がついたもの‐と考える方が、まだまだ多いようです。本屋さんの本棚に並んでいる絵本を、じっくりとご覧になってみてください。きっと、ストーリーのある「物語絵本」よりもむしろ、子どもに知識をあたえる目的でつくられた「知識絵本」の方が多いことに気づかれることでしょう。
何を隠そうわたしは、知識絵本の書き手なのです。知識絵本には物語絵本のような強いドラマ性がありません。ですから、子どもたちに最後まで読んでもらうのはたいへんです。逆にいうと、そのためにあれこれ工夫するのがたのしいのです。
そんなわたしが、強くおすすめしたいのが、韓国を代表する知識絵本の書き手のひとりである、ホ・ウンミの絵本です。ホ・ウンミは、延世大学でドイツ文学を学んだあとに大手出版社で児童書の企画・編集に携わりました。その後、フリーの絵本作家、翻訳家として活躍しています。
最初に紹介するのは、『おかあさんの おっぱい』です。
「ブタのおっぱいはポヨンポヨン。乳首はブラブラ14個。ブタの赤ちゃんはいつも同じ乳首からお乳を飲みます」
どうですか! ブタの赤ちゃんにはそれぞれ自分専用の乳首があるって、知っていましたか? 強い子ブタが、よくでる乳首を独占してしまうのです。
ブタ、ウシ、カンガルー、イルカ、それぞれの動物の乳首がどこに何個あって、どのように飲むのか教えます。そして、は虫類である恐竜にはおっぱいがないことを話し、ほ乳類のことを理解させていくのです。さらに人間のおっぱいの話へと続いていきます。
「お母さんのおっぱい、ふんわり甘いいいにおい。
お母さんのおっぱい、大好き!」
しかもこの絵本の絵は、韓国の絵本画家としてはじめて国際賞(04年・ボローニャ優秀賞)を受賞した、ユン・ミスクが担当しているのですよ。
もうひとつは、『うんちのちから』です。
「赤、黄色、緑、絵の具かな? ちがうちがう。これはカタツムリのうんち。 カタツムリはえさによって、うんちの色がちがう」
どうですか! カタツムリって、食べる花の色によって、うんちの色がちがうこと知っていましたか? ゾウ、ラクダ、パンダ、ライオン……。うんちを見れば、体が大きいとか、どこにすんでいるとか、いろんなことがわかるのです。それだけではなく、カバのうんちは魚のえさになるように、だれかがしたうんちが虫たちのえさになって土になり、その土から木や草、果物や野菜が育つことも教えてくれます。
「うんちは、本当にすごい!」
この絵本は娘さんが、自分がしたうんちを流しながら「バイバイ、またね!」とあいさつする姿を見てアイデアを得たといいます。
それまで韓国には質の高い知識絵本が少なく、多くが日本をはじめとする外国の翻訳本でした。韓国の知識絵本を豊かにしたくて、わたしは韓国で仕事をはじめました。しかし今では、韓国の知識絵本がどんどん海外で翻訳出版されるまでに成長したのです。
キム・ファン(絵本作家)
(2015.11.11 民団新聞)