今年もあとひと月となりました。今年は韓国の絵本界にとって、特別な年だったように思います。
毎年春に、イタリアのボローニャで、世界最大の見本市である、「ボローニャ国際児童図書展」が開催されることは、このコラムでもよく取りあげてきましたよね。今年そのボローニャ図書展において、韓国絵本が「ラガッツイ賞」5部門すべてで「優秀賞」を受賞するという快挙を成し遂げたからです。
韓国絵本がボローニャで初めて賞を取ったのは、2004年のこと。この受賞を機に、次つぎと国際的な賞を受賞してきました。しかし全部門で受賞というニュースには正直わたしも、「ついにここまできたか!」と感慨深いものがありました。
でも、多くの読者のみなさんは、「優秀賞で満足していてはいけない。『大賞』をとらなくては!」と思っていることでしょう。ご安心ください。実はすでに、11年と13年に大賞を2度も受賞しているのですよ。しかも、同じ画家が。
この画家は韓国ではよく、「イボナ」と呼ばれています。この愛称だけ聞くと、「イ・ボナ」という韓国人のように聞こえてしまうのですが、本名はイヴォナ・フミエレフスカ。ポーランドの画家です。イヴォナは大賞を受賞したときの記者会見で、
「韓国は作家としての私の人生がはじまった場所」と、答えています。
ではどうして、ポーランドの画家が、韓国で絵本をだすようになったのでしょうか? イヴォナの人生に転機が訪れたのは03年でした。自ら絵の束を胸に抱えてボローニャ図書展に乗り込んだ彼女は、企画者のイ・ジウォンと運命的な出会いをはたします。大学でポーランド語を学び、留学経験もあったイ・ジウォンはイヴォナの絵にほれこみ、ポーランドででた絵本すべてを韓国でだそうと心に決めたのでした。
翌04年、最初の翻訳本が韓国ででます。このときイヴォナは生まれて初めて韓国を訪問したのですが、街のあちらこちらにあふれているハングルに興味を持ちました。それを知った相棒のイ・ジウォンは、写真(上)のようにハングルの形をモチーフにした絵本、『考える 』(日本語版未刊)を企画します。
この絵本で大成功したイヴォナは、その後はポーランドでだした絵本の翻訳ではなく、韓国で企画された絵本を担当するようになっていきました。
そして07年、『考える』の姉妹作である『考えるABC』(日本語版未刊)で、ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)で「金のリンゴ賞」に。11年に『こころの家』で「ボローニャ・ラガッツィ賞の大賞」を受賞し、何と、13年にも『目』(日本語版未刊)でまた、大賞を受賞したのです。
つまりイヴォナ・フミエレフスカは、韓国の出版界が発掘し、育てた世界的な絵本画家なのです。
さて、今回紹介する『こころの家』の内容です。目には見えないけれど、だれにでも、こころはある。きみにも、ぼくにも。でも、こころってなんだろう。こころを家にたとえて語る詩的な文と、イマジネーション豊かなイヴォナの絵がよくマッチした絵本です。
キム・ファン(絵本作家)
(2015.12.9 民団新聞)