韓国の人たちは野菜と果物を本当にたくさん食べます。そんな韓国の人たちが好んで食べる果物の代表格といえば、やはり柿でしょう。もちろん乾燥させてつくられた干し柿も、お正月や秋夕などの名節やチェサには欠かせませんよね。
そうそう、干し柿といえばこのお話。今回は干し柿が大活躍?する、むかし話絵本『とらとほしがき』を紹介しましょう。
むかしむかし山奥に大きなトラが住んでいました。
ある日、長い昼寝から覚めたトラは、うまいものを食おうと山をおりていきました。山のふもとに着いたときには、もうすっかり真っ暗。ウシ小屋のある小さな家を見つけます。
「ようし、あのウシを食ってやろう」
トラがウシに近づくと、部屋ではお母さんが、泣いている赤ん坊をあやしていました。
「泣くのはおよし。坊やの泣き声を聞いて、オオカミがくるわよ」
でも、赤ん坊は泣きやみません。トラは赤ん坊が、オオカミをこわがっていないと思いました。
お母さんは、また、いいました。
「泣くのはおよし。坊やの泣き声を聞いて、クマがくるわよ」
でも、赤ん坊は泣きやみません。トラは赤ん坊が、クマもこわがっていないと思いました。
お母さんは、また、いいました。
「泣くのはおよし。坊やの泣き声を聞いて、トラがくるわよ」
でも、赤ん坊は泣きやみません。トラは「わしが少しもこわくないようだ」と、がっかりしました。
そのときお母さんが、赤ん坊に何かをあげました。 「泣くのはおよし。さあ干し柿よ」
赤ん坊が泣きやんだのをみて、トラは考えます。
「いったい、干し柿とはどんなヤツなのか。あの赤ん坊が泣きやんだということは、わしより強くておそろしいヤツにちがいない」 トラは干し柿がくる前に山に帰ろうとします。ちょうどそのとき、ウシを盗もうと泥棒がしのびこんできました。泥棒はトラをウシとかんちがいして、さっと背中に飛び乗りました。
「干し柿が、わしを食おうとしている!」
トラは必死に逃げだしました。途中、泥棒は木の枝につかまってトラから逃げましたが、トラはうしろもふり返らず走り続け、二度と村へはおりてこなかったというお話です。
この絵本をつくったパク・ジェヒョンは、延世大学のフランス文学科を卒業したあとカナダに渡り、ハルモニからくり返し聞いたこのお話でデビューしました。
実はこの絵本は、原題が「THE TIGER AND DRIED PERSHIMMON」というカナダで出版されたものなのです。
干し柿といえば、このむかし話のほかに、もうひとつ頭に浮かぶものがありますよね。そうです。干し柿の入った、生姜とシナモンがスパイシーな韓国の伝統茶、「スジョングァ(水正果)」です!
スジョンガは、暑いときに冷やして飲むものという印象がありますが、実はお正月にもよく飲まれるのですよ。新年のあいさつに訪れた人のためにたくさん用意してふるまう、おもてなしのお茶なのです。
キム・ファン(絵本作家)
(2016.1.1 民団新聞)