掲載日 : [2016-06-22] 照会数 : 5029
<布帳馬車>「同調圧力」まっぴら御免
休日の取材帰りに西日暮里を散策していると、気になる行列があり、その先には老舗の和菓子屋さんがあった。その味を堪能せずにおくべきか、行列に加わったものの、なんと無残にも品切れ宣告を受けてしまった。
行列に、ある種の魅力を感じてしまうタイプではある。その先には何があり、人々はどんなものを求めているのか、そんな興味からつい離れられなくなってしまうのだ。心理学で言う「同調行動」の一種かもしれない。
「同調行動」には人とひとの関係を和ませるなどメリットは多い。だが、特定の意志によって「同調圧力」に誤変換されてしまうこともある。昨今の日本社会にそれを感じる。自分たちの「共同体」が犯した過ち、受けた傷を忘れ、むしろ美化し、やたら誇りを持つように強いていく。その邪魔になる異物の排除をいとわない。そうした「同調圧力」装置が随所に仕掛けられている。「日本人であるだけで最高の存在」といった自己肯定本が売れているとか。
そうした「同調圧力」の尖がった行動部隊が「日本浄化」を唱えるヘイトスピーチ団体だろう。対策法が施行されて最初の日曜日、川崎市中原区の公園を起点に行われる予定のヘイトデモが、「差別を許すな!」「レイシストは帰れ!」と叫んで結集した市民600人の抗議行動によって中止に追い込まれた。
体を張った市民たちに共通するのは、「日本人最高」と言いながら差別と憎悪をまき散らし、日本を貶める愚行から自分たちの日本を守りたいとの思いだろう。西日暮里で行列をつくっていた人たちと、少し若いことを除けば何ら変わりがないふつうの人々なのに、なんと頼もしいことか。(T)
(2016.6.22 民団新聞)