掲載日 : [2017-05-24] 照会数 : 5653
韓国テンプルステイ<3>曹渓山 松広寺
高僧輩出で知られる「僧宝寺院」
美しい干潟で知られる順天湾の玄関口、順天市(全羅南道)からバスで約1時間20分。車中から桜並木を楽しむうちに松広寺駐車場に到着した。週末とも重なり周囲に並んだ食堂はいずれもにぎわっている。
なだらかな山道は歩きやすく、20分弱で山門(一柱門)の曹渓門が見えた。曹渓山(887メートル)は岩石が少なく温和な山といわれ、蓮の花のような峰々が寺院をすっぽり包み込んでいる感じだ。
正面に「曹渓山 大乗禅宗 松廣寺」「僧寶宗刹曹渓叢林」と大書されている。禅・律・講院を備えた曹渓叢林として総合修行道場の伝統を受け継いでいる。国際禅院があり、各国から修行に訪れる。スニム(僧侶)によると、座禅は50分間したあと10分休み、1日に10時間の修行をする。
新羅時代末期、慧麟禅師が吉祥寺の名称で創建。松の木が多いことから山号を松広山と称した。高麗時代、普照国師(知訥)が乱れた仏教界を浄化するため、吉祥寺を拠点に定慧結社を組織して修行運動をすすめ、座禅修行の伝統を確立した。その際に寺名を修禅社に改める。これを契機に禅寺、修行の根本道場として広く知られ、16国師(僧に授けられる最高階位)をはじめ高僧を輩出する名刹となった。このため「僧宝の寺」と呼ばれる。
寺のシンボルともいえる国師殿(国宝第56号)には高僧の肖像がまつられている。さまざまな惨禍の中で大雄殿や説法殿は焼失したものの国師殿は火災をまぬがれ、貴重な文化財として大切にされている。朝鮮朝初期、松広寺に改称され、山号を曹渓山とした。
多様なプログラムが組み込まれる土曜日は人気で、参加者が多い。修練館でのミーティングで「テンプルステイは仏教を学ぶというより文化体験」との説明に納得がいく。境内の一角に「解憂所」の案内板があり、トイレのことだとわかった。
礼拝前に、鐘鼓楼で4種類の打楽器パフォーマンスが演じられる。5人の僧侶が交代しながらのバチさばきは迫力があり、圧倒される。バチとともに袖が舞う姿がなんとも粋だ。礼拝後はスニムを囲んでの茶会。10代から70代まで年齢差があり参加動機もまちまちだが、僧侶は「因縁の出会い」と強調した。
早朝の礼拝は3時半から。本堂に入ると中は団体客でびっしり。東海仏教大学社会講座で学ぶ100人が夜を徹してソウルから参加したためだ。互いに肩を寄せあいながらの読経が大きく響いた。
朝食後、僧侶の案内で散策。境内に渓流が注ぎこみ、虹橋や池、滝などの秀麗な眺望をつくりだしている。山道の上から見おろした寺院と桜の光景がひときわ美しい。
鐘鼓楼 16カ所の庵のうち実際に使用しているのは5、6カ所だという。そのひとつ仏日庵に行くと、満開の山桜が咲き誇っていた。そこへ団体客が合流し、一気に騒々しくなる。庵の壁に「黙言」の張り紙を見つけ、思わず口をつぐんだ。
◇全羅南道順天市松広面松広寺内路100(℡8261‐755‐0108)
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.5.24 民団新聞)