掲載日 : [2017-08-02] 照会数 : 5419
韓国テンプルステイ<9>錦山 菩提庵
大海絶壁の寺院 霊験あらたか
江原道の洛山寺、江華島の普門寺とともに菩提庵は韓国3大観音聖地と呼ばれ、願いごとを叶えてくれることで名高い。麗水の向日庵を加えて4大観音聖地と呼んだりもする。
統営市(慶尚南道)の閑山島から全羅南道の麗水市にいたる南部沿岸が閑麗海上国立公園。その一角、南海島の南端に菩提庵は位置する。河東(慶南)または順天(全南)から南海行のバスが出ていて1時間半ほどで着く。南海バスターミナルから菩提庵駐車場までは南海大橋をはじめ海岸沿いの風景を眺めながら約30分。便数が少ないので注意を要する。
「南海金剛」と称される錦山(681メートル)は閑麗海上国立公園のうち唯一の山岳公園で、奇岩怪石が多い。山頂にある菩提庵へは駐車場からシャトルバスが随時運行するものの、乗客が15人ほどに達しないと出発しない。徒歩で登れば3時間はかかるので、急ぐ場合はタクシーを利用するほかない。さらに不便なのは、寺院にテンプルステイの施設がないこと。日帰りで戻らなければならない。それでも、霊験あらたかな寺院との評判が高く、団体参拝者が絶えない。
山頂近くの券売所まで車で約20分。季節は春先。尾根づたいの道は風が強く歩くのをさえぎり、寒さが肌にしみる。15分ほどで寺院に着く。霊峰から見わたす大海の景観のすばらしいこと。ようやくたどり着いた旅の疲れが一瞬にして吹き飛んでしまう感じだ。極楽殿や万仏殿、錦山閣などの殿閣はどのようにして建立されたのか、絶壁にたつだけに感心させられる。反対側から険しい道を登ってきた人々が大海の景観を見るや、いちように感嘆の声をあげている。
大海に向けて建立された観音菩薩像の前には座布団が敷かれ、参拝者は五体投地法で熱心に祈祷していく。大海を前にしての礼拝は効力があると感じるのかもしれない。
683年、元曉大師(617〜686年)がここに草堂をたてて修行していると、観世音菩薩に実際に会えたという。山名を普光山、寺院を普光寺と名づけた。李成桂がここで百日祈祷をおこない朝鮮王朝を開いたといわれる。感謝の意を込めて王室の願堂(死者の冥福を祈るための建物)とし、山名を錦山、寺を菩提庵にあらためた。
元暁大師が座禅をくんだとされる座禅台岩が目を引く。「双虹門」と呼ばれる洞窟、菩提庵殿の三重石塔も見どころだ。心をこめて祈りを捧げれば、願いのひとつは聞き届けてくれるという。日の出の名所としても知られる。
おりしも今年は元曉大師の生誕1400年。横浜市の金沢文庫では8月20日まで、記念特別展「アンニョンハセヨ! 元曉法師」を開催中だ。韓国では見られない貴重な史料を目にすることができる。
◇慶尚南道南海郡尚州面菩提庵路665(TEL8255ー862ー6115)
元曉大師 ソウル市内に元曉路や元曉大橋などと名が冠されるほど有名な僧侶。和諍(わじょう)思想を根本に森羅万象が「1つの心」に帰すと説き、韓国仏教の基礎を築いた。それを義湘大師が整理し、知訥禅師が禅と教の和合を図ったとされる。
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.8.2 民団新聞)