掲載日 : [2017-10-11] 照会数 : 5956
韓国テンプルステイ<14>雪岳山 新興寺
雄大な自然美の中に祈りの空間
韓国の登山者にもっとも人気なのが、江原道の雪岳山。約400平方キロメートルの国立公園は、最高峰の大青峰(1708メートル)をはじめとする、雄々しくも麗しい山々と渓谷が自然の美を織りなす。花こう岩でできた峰々が雪のように白いことから、「雪岳」と名づけられた。その登山口が新興寺だ。
ソウルから高速バスで約3時間、東海岸の束草市に着く。市内バスに乗り換え、40分ほどで雪岳洞駐車場。紅葉の季節とあいまってクルマが制限され、登山服姿の人々でごったがえす。
歩いて20分ほどでテンプルステイ宗務所だ。山の美しさに誘われ、2泊することにした。ここから本堂の極楽宝殿までは少し離れており、途中で、統一を祈願するための「青銅座像大仏」の前を通るたびに合掌していく。
大青峰の頂上にいたる外雪岳の大部分が新興寺の所有地と聞いておどろいた。翌朝、本堂に行こうとすると、下の方からホタル群のような、無数のライトの明かりがこちらに向かってくる。まだ3時半を回ったばかり。長い行程の雪岳山を踏破しようとする登山家集団だった。
652年、慈蔵律師が香城寺を創建したのがはじまり。火災に見舞われ、701年に高僧義湘が現在の内院庵の地に再建し、禅定寺と称した。1640年代に再び焼失後、霊瑞、恵元、蓮玉の3僧侶が修復を誓い祈祷していると、いつまでも栄えるようにと神のご託宣があり、神興寺にあらためたという。1995年、嶺東仏教を新たに興す意味から新興寺に改称された。
雪岳山はさまざまなコースがあり、見どころが多い。寺院から東南方向の飛龍滝コースは奇岩奇峰が多く、吊り橋や紅葉のあいだを滝が流れるさまは金剛山をほうふつさせる。実際、同じ山系であることが実感できる。
北側の有名な「揺れ岩」(フンドゥル バウイ)までは3キロのコース。すぐ隣に並んだ継祖庵石窟がすばらしい。洞窟のように巨岩をくり抜いた中は慶州の石窟庵に似た雰囲気で、奥に釈迦如来座像が安置されている。時代を超えて多くの高名な僧侶たちが修行してきたといわれ、今なお参拝者は多い。あまりの神々しさに、外国人が何度もシャッターをきっていた。
大青峰や鳳頂庵に登るには片道5〜6時間かかる。慈蔵律師が建てたといわれる鳳頂庵は標高1244㍍に位置する。寂滅宝宮と呼ばれ、五層石塔の舎利塔が特色で、参拝者に深い感銘を与えずにはいられない。雪岳山全体がひとつの「仏国土」といえるかもしれない。
◇江原道束草市雪岳山路1137(℡8233ー636‐7044)
寂滅宝宮 釈迦の舎利を祀った所。寂滅とは煩悩がなくなった状態、悟りの境地である涅槃(ねはん)を指す。通度寺、新興寺、上院寺、浄岩寺、法興寺を五大寂滅宝宮と称する。
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.10.11 民団新聞)