掲載日 : [2017-10-25] 照会数 : 5814
韓国テンプルステイ<15>五峰山 洛山寺
観音菩薩パワースポット随所に
ソウルから高速バスに乗り、約3時間半で江原道東海岸の束草に着く。雪岳山の登山口でもある。市内バスに乗り換え、15分で「洛山寺入口」へ。みやげ店と食堂が並んだ隣に「洛山寺への道」と記された看板が見える。
霊験あらたかな3大観音聖地のひとつとして名をはせているだけに、観光客とともに参拝者が絶えない。
約30万坪の広大な境内は、道に沿って樹齢100年の梨の木や、柿、栗、コスモスなどが並び、秋を感じさせる。食卓にもナシやリンゴなどがのぼり、秋の味覚を楽しませてくれた。
洛山は、観音菩薩が住むインドの捕陀洛伽山の略。671年、華厳宗の祖である義湘大師は、観世音菩薩の仏舎利が洛山東方の海岸洞窟にあると聞き、そこで勤行をおこなっている際に現れた観世音菩薩の導きによって断崖の上に開いたと伝えられる。義湘が座禅をしたという場所が「義湘台」で、記念写真を撮る人でにぎわう。
本堂である円通宝殿、さまざまな観音像をまつる宝陀殿、そして紅蓮庵の3カ所で礼拝がおこなわれる。もっとも印象的だったのが紅蓮庵。絶壁の上に建つ小さな庵で、目の前に果てしなく海が広がる。僧侶の木魚、経とともに、打ち寄せる波の音がここちよい。庵内の床に設置されたのぞき窓からは、岩間をぬってはじける波しぶきが見える。願いごとを唱えれば、ひとつは叶うらしい。「信じることが大切」と僧侶が強調した。
2005年に襄陽郡一帯で起こった大規模な山火事で多くの仏閣も焼失したが、紅蓮庵の手前で鎮火した。義湘の功徳だろうか。幸いだったのは、その後、朝鮮朝時代の有名な画家、檀園・金弘道が描いた「洛山寺図」と発掘調査に基づいて朝鮮朝前期の姿に復元されたことだ。
一番の高台にある海水観音像(観世音菩薩像)は高さ17メートルもあり、東海の大海原を望む姿に迫力が感じられる。背後には雪岳山の峰々がつらなり、海と山の風景を同時に楽しむことができる。前方を少し下ったところに小さな観音殿がたつ。足を踏み入れた途端、はっとした。仏像はなく、窓ガラスを通じて海水観音像がじかに見えるのだ。内部に気がこもっているように感じられ、しばし瞑想にふけった。
海水観音像は夜間にライトアップされ、高台にあるため境内のあちこちから目にすることができる。闇の中に浮かぶ観音像は昼間よりもくっきりと見えて神々しい。
海水観音像の前からはご来光が拝める。太陽が顔を出す直前に空を紅く染めていく光景は、見る者に新たなエネルギーを与えるようだ。真っ赤な太陽が見えだすと、海水観音像も赤みを帯び、荘厳さを増す。だれもがごく自然に手を合わせている。
◇江原道襄陽郡降 面洛山寺路100(℡8233‐672‐2447)
観音菩薩 多くの別名があり、韓国では観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)が一般的。現世利益と結びつき、人々の苦悩を救う。慈悲深く、宗派の枠をこえて広く信仰されている。
宋寛(韓国文化研究家)
(2017.10.25 民団新聞)