コラム・特集 内容

 白いパジチョゴリに山高帽子をかぶったハラボジが、写真の中からじっとこちらを見つめています。一見すると、3・1独立運動の発火点となったソウルのタップコル公園に今もいそうなハラボジのようです。

 種明かしをすると、時代は解放直後の1946年頃、場所は山口県の仙崎港で、不本意な他郷暮らしにようやく決別しようとする1世が、故郷へと向かう乗船前に写したものだと聞きました。

 額に刻まれたしわと何かを訴えるような目は、〞晴れて祖国へ〟という気分とはほど遠く、哀愁に満ちています。見る者を釘付けにしてしまうのは、厳しかった暮らしに心が揺さぶられるからでしょうか。

 日本帝国主義による植民地支配が引き金となった渡日。日本敗戦にともなう解放。同族相殺の「6・25」動乱による致命的な民族分裂。そして差別と生活苦に見切りをつけ、「地上の楽園」との甘言に騙されて北韓に渡った「北送事業」など、1世の生きてきた時代は、激動そのものでした。

 日々の生活で何を考え、どのように2世を育ててきたのか。同胞史を風化させることなく、後世に伝えていきたい。そういう思いを込め、20日から始まる民団フェスティバルでは、時代に翻弄された1世の姿を中心に、言葉よりも雄弁に語る写真によって「在日」の生き様に迫ります。そこには、忘れてはならない私たちの原風景があるはずです。(C)

(2002.11.06 民団新聞)

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