掲載日 : [2005-05-18] 照会数 : 6128
<コラム・布帳馬車>歴史資料館への期待
民族学校に通った2人の娘は、せっかく身につけたウリマルを本物にしたいと韓国に留学し、2人とも滞在1年の間、日本に帰ったのは正月の1週間だけだった。その後も気軽に韓国にいく。私は3泊4日で飽きがくるのに、韓国とよほど水が合うらしい。その影響で女房までがキムチ留学すると言い出した。
民族学校時代、派遣教師が在日を軽蔑する事例を目の当たりにすることが多かった娘たちは、本場の韓国人にいい印象を持っていなかっただけに嬉しいことだ。しかし、新たな課題が突きつけられたように思う。最低限の民族教育をさせたのは、日本社会に対して自らの主体性を堅持してほしいためで、韓国社会に対してのそれはほとんど意識してこなかった。
韓国社会の一部には在日同胞に対して、虐げられルーツを失った可哀相な人々であるとか、あるいは軍事独裁政権に追従した保守反動勢力が強いといった認識がある。娘たちも時折そのようなニュアンスを感じとったことがあるという。
在日同胞は、国家的な保護に恵まれることなく生き抜いてきた。その独自の力強い歴史は、すでに100年に及んでいる。韓国への貢献も、特定の政権云々の次元を超えた祖国・故郷に対する素朴な愛情が支えたものだ。韓国社会と本格的に交われば交わるほど、「在日とは何か」をしっかり主張する機会は増えるだろう。年内には「歴史資料館」がオープンする。世代を超えて在日のアイデンティティーを育む場になるよう期待したい。(D・J)
(2005.05.18 民団新聞)