掲載日 : [2005-07-06] 照会数 : 4735
東京弁護士会「差別撤廃は地域から」
[ 条例要綱試案を検討するシンポ参加者(弁護士会館) ]
条例制定へたたき台…民族的少数視野に
東京弁護士会「人種差別禁止法制定プロジェクト・チーム」は、自治体レベルでの人種差別条例の制定を求め、独自の条例要綱試案をまとめた。試案は人種差別の定義に「国籍」と「在留資格」を明確に位置づけ、公務就任・昇任についても役職の区別なくすべての差別を禁止するなど、在日同胞ら日本国内で民族的少数者として生きる在日外国人を強く意識した内容となっている。
要綱試案は6月30日、東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」主催のシンポ席上、同プロジェクトチームが「たたき台」として報告した。背景には都の保健士・鄭香均さんが国籍を理由に昇任試験の受験を拒否された問題や、石原慎太郎都知事による人種差別発言、あとを絶たない民間賃貸住宅の入居差別、朝鮮学校生徒への暴行事件などがある。
日本は国連の人種差別撤廃条約を一部留保付きながら批准している。しかし、「人種差別を禁止し、終了させる」という義務(2条1項d)は怠り、国レベルでの差別禁止法や政府から独立した人権救済機関を整備するまでには至っていない。このため、人種差別撤廃委員会からは再三、「人種差別を禁止する特別法の制定が必要」との勧告を受けてきた。
一方、自治体レベルでは国に一歩先んじて「人権尊重の社会づくり条例」など、すでに760を超える自治体で人権条例が制定されている。中には「在日外国人差別などあらゆる差別をなくし、差別のない明るく住みやすい町づくり」を目指すとうたうところも多い。同プロジェクト・チームは、自治体がこれら人権条例の延長線上で「人種差別撤廃総合施策室」を設置し、人種差別撤廃のための施策を総合的に調整・推進していくことを期待している。
シンポの席上、パネリストの鄭暎恵さん(大妻女子大学教員)は「地域から差別を禁止する条例を積み上げていくことが大事」と試案に期待感を表明した。また、自由人権協会「外国人の権利小委員会」に所属して同様の試案の作成にも関わった藤本俊明さん(神奈川大講師)は「外国人の人権問題は日本人自身の問題であるという想像力がまず前提になる」と市民の意識改革を促した。
同プロジェクトチームでは今後、この試案をたたき台に市民・自治体と協力しながら条例の制定を働きかけていく。
(2005.07.06 民団新聞)