掲載日 : [2005-07-06] 照会数 : 8365
民団が教科書フォーラム…政治介入許すな!
[ 教科書は民衆と人権の視点が大事と確認したフォーラム=3日、東京・ニッショーホール ]
子らの未来を考えて…「つくる会」本の採択阻もう
「近隣との友好損なうな」
民団中央本部が主催する「歴史教科書と子どもの未来を考えるフォーラム」が3日、東京・虎ノ門のニッショーホールに首都圏の団員ら約450人が参加して開催された。「教科書問題」をテーマにした初のフォーラムで、金宰淑団長は「日本の中学校に子どもを通わせる在日の保護者にとって、歴史を歪曲する教科書採択は容認できない。共通認識を図る研修と各教育委員会への要望を続けているが、8月の採択に向けて良識ある日本人とともに全力を尽くそう」と呼びかけた。
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基調報告に立った滋賀県立大学の姜徳相名誉教授は「つくる会」が主導する教科書の登場により、保守派議員らを巻き込んだ従軍慰安婦などの記述削除の政治運動が激しくなり、教科書採択の座標軸が右に傾いたと述べた上で、「対韓ナショナリズムを煽り、近隣諸国を貶める動きを許すな」と訴えた。
続いて歴史学者の立場から京都大学の水野直樹教授が「日本の植民地支配の本質は、創氏改名などで同化させながら同時に差別するものであった」と告発。「つくる会」の教科書は「国家・公を軸に、国家的対立や国際的緊張を強調し、民衆の視点、基本的人権が欠落している」と批判した。早稲田大学の李成市教授は、歴史学者が一人も執筆に関わっていない「つくる会」の教科書自体が問題だと指摘。「ボーダレスの時代に、百数十年前の価値観に回帰しようとすることは、世界的規模で活躍しようとする子どもたちへの犯罪行為だ」と断じた。
市民運動の立場からは、従軍慰安婦の問題に取り組む「VAWW‐NETジャパン」の西野瑠美子代表が、「お詫びと反省を表明した内閣官房長官談話は、現日本政府の見解にもかかわらず、『つくる会』は政治家・学者・民間と一体になり、でっち上げ呼ばわりしている」と批判。「人道に対する罪を教科書に反映させ、歴史を風化させてはならない」と訴えた。
「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は、宮崎で自民党県連が主催した教科書問題シンポに県教育長や「つくる会」の事務局を担う大学教授が出席した事実を、教育基本法が禁じたなりふりかまわない政治介入だと批判しながら、「子どもたちをアジアのみならず国際社会で孤立させてはならない」とアピールした。在日韓国青年会の壽隆会長は、「繰り返される政治家の暴言や自国の矛盾をすべて反日に転嫁させる政治圧力に対して、平和と人権を守る闘いを貫徹しよう」と訴えた。
最後は、民団東京本部の李時香団長が近隣諸国条項に基づく望ましい歴史教科書の採択を求める決議文を読み上げ、満場一致で採択した。
新宿の崔承娥さん(39)は、「どんな教科書が採択されるか心配なので参加した。いろんな団体が活動していることを知り、勇気づけられた。日本の未来のためにも、過去に犯した過ちを事実として受け入れてほしい」と話した。「つくる会」の教科書採択に反対する杉並・親の会の結柴典子さん(52)は、「侵略戦争を賛美する『つくる会』の教科書は、過去の過ちへの思いが根底から変えられている。親として許せない。外国人の子弟がこの教科書で学ぶと、きっと恐怖心を持つのではないだろうか。これまでの反対署名は1万5千人を超えたが、不採択まで引き続き集めていきたい」と決意を述べた。
(2005.07.06 民団新聞)