掲載日 : [2005-07-06] 照会数 : 8047
<第12期平統>羅大使と李教授が特別講演
[ 羅鍾一・駐日韓国大使 ]
[ 李鍾元・立教大学教授 ]
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韓半島の平和と繁栄…羅鍾一・駐日韓国大使
在日同胞は特別使命
解放を迎えたとき、植民地であったインドをはじめ、マレーシア、インドネシアなど多くの国が独立したが、韓国が最も苦しい立場にあった。産業がありましたか? 民主化がされていましたか? いろいろな衝突、理念・イデオロギーの対立、常に騒々しく暴力が飛び交う状態だった。
韓国戦争が終わったとき、復興のためにとハワイの同胞が2万㌦を送ってくれたことがある。これで李承晩大統領は工科大学をつくった。それが仁荷工科大学、後に仁荷大学となった。
屈辱はね返し、復興実現した
李承晩大統領に、米大使館の外交官が「無駄なことをする」と批判を浴びせた。「全くクレイジーなことだ。韓国がどうして工業国家になり得るのか。産業国家にはなりえない。せいぜい自分たちが食べる食べ物を、穀物を作っていけるだけだ。それが最もいい経済発展になる」と。そのお金で稲の品種改良をする方がいいのではないかという忠告もあった。
我々には何の資本も技術もエネルギーも自然資源もなかったが、今では世界トップ10に入る経済大国になった。それだけでなく民主化、政治的な発展はさらに目覚ましいものがある。50年代中盤に英国のロンドンタイムスの記者が「韓国が民主主義なんかできるわけがない。韓国が民主主義になるならば、ゴミ箱からバラが咲くだろう」といった記事を書いていた。今では、世界のどの先進国にも劣らない民主的な発展を成し遂げた。
社会的な面でも目覚しい発展を実現してきた。まず、女性の地位が非常に向上した。外交部に入ってくる外交官のおよそ半分は女性だ。今や陸軍士官学校、海軍士官学校、空軍士官学校の卒業生の中にも、少なくとも10%、20%くらいは女性がいる。それだけ女性の地位が向上した。もっとも皮膚で感じるのは、文化的な発展だ。韓国はすでに、文化商品を輸出できる、世界で人気を得られる国になった。音楽や美術、スポーツもすごい。
この50年間の発展を見ると、本当に韓国の国民として自負を感じることができる。困難な状況の中でスタートし、ここまで発展をしたのがどれだけ誇らしいことか。しかし、自慢できることだけではない。恥ずかしいこともある。国が今でも分断、分裂、葛藤から解放されていないことだ。
努力が足らなかったわけではない。さまざまな指導者が努力をしてきた。しかし、我々の民族が交流をし、協力をし、お互いに和解をし、心を一つにして暮らしているか、考えると大変恥ずかしい思いをする。羞恥心、いま我々は何をしているのかという自責感。こういったものはみなさんにも必要ではないか。
分断と断絶を克服する役割
在日同胞の平統諮問委員は他の方々とは異なる特別な使命があると思う。私は何度も、同胞社会の指導者に言ってきた。日本に暮らす同胞は他の国の同胞とは違い、もっとも民族意識が強く、祖国の幸せを願っている。新たな時代の新たな使命をもって、これまでを基礎として、祖国と民族のためにもう一度、大きな業績をぜひ打ち立てていただきたい。他でもなく、日本で民族の分断と断絶、そして葛藤を克服する役割を果たしてほしい。
いつか我々が8・15光復節を一緒に行い、全てにおいて協力できるそういった民族になりたい。これはまさにみなさんにかかっている役割だ。特に民主平和統一諮問委員として選出されたみなさんは、他の同胞のみなさんとはまた違う、指導者としての自覚、使命感を持っていただくようお願いしたい。もし在日同胞社会で、葛藤と断絶を克服する、そういった業績が成し遂げられれば、本国の人たちが在日同胞社会にその経験を学ぶはずだ。
あらゆる面で発展を実現した我々の力を、民族の和解と交流、そして協力、そして統合のために集中させ、民族の最後の大きな課題を実現するように努力しよう。
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6者会談と対北戦略…李鍾元・立教大学教授
多者安保への展望も
鄭東泳統一部長官と金正日委員長の6・17会談で、6者会談再開の動きが加速化し、粘り強い外交的努力を続ける韓国の比重が劇的に高まった。金委員長の発言は会談再開だけでなく、核問題の根本的解決への「戦略的決断」の可能性を示唆するものと注目される。
6者会談は北核問題の解決だけではなく、流動的な東北アジアの地政学的不安と地域安全保障の憂慮を包括的に協議し、構造的に解消する一つの代案的枠組として発展する可能性を含む。周辺国間の勢力競争を回避し、韓国の国益を確保するためにも地域的な多者安保機構を積極的に推進する必要があり、韓国の積極的役割は望ましい地域秩序形成の主導的役割の足がかりになる。
瀬戸際外交の最終段階の北
今年2月10日の北韓の核保有宣言と一連の危機状況は、03年1月のNPT再脱退以降、北韓が推進してきた新しい瀬戸際外交戦略の最終段階だと言える。北韓は02年に試みた一連の政策転換(経済管理改善措置、南北鉄道連結合意、拉致認定と朝日交渉、濃縮ウラン核開発認定と対米交渉の試み)がブッシュ政権の強硬政策で挫折した後、2年余りの間核能力の強化と事実上の核保有国の地位確保を指向してきた。核保有宣言はその一つの完結点であり、これを足がかりとして外交的妥結を試みる起点でもある。 今回、北韓が韓国との関係設定を前向きに転換し、韓国外交にも積極的反応を見せたのは、韓国の動きが米との緊密な合意のもとにあり、韓米間の連携的提案という性格に注目した結果と見るべきだ。米と対立した韓国から受け得るものは大きく制限され、一時的だという事実を北韓自身がよく知っている。
3回の6者会談で、参加国の立場と戦略の輪郭は明確に現れた。図式を単純化すると、北韓の非核化という原則に関しては、北韓自身も含めて全参加国の共通した合意事項となった。北韓を除いた5カ国の北核を容認しないという原則は確固としている。多様な意見があった非核化に至る方法論でも、段階的接近や北核放棄と安全保障及び経済支援の同時的交換妥決という原則には共通認識が形成され始めた。
参加国で一番大きな比重を占めるブッシュ政権の対北戦略の最大の問題点は、内部の対立で統一的政策が推進できないことにある。軍部とネオコン(新保守主義者)で構成される強硬派は、世界的な反テロ戦争遂行、北韓体制に対する嫌悪感、アメリカの軍事的、準軍事的手段の効果に対する信念などを背景に、北韓との妥協に反対し、孤立と枯死を推進し「政権交代」を目標にすることを主張する。半面では、このような軍事的、準軍事的接近の非現実性(中国及び、韓国の反対、アメリカの軍事的限界、国際政治の制約、アメリカの戦略的観点での費用効果)を指摘し、外交的手段を通じた妥決が模索されている。
北韓核の実態…確認がカギに
ブッシュ大統領自身は個人的には北韓体制に対する嫌悪感から強硬論を支持してきたが、2期政権出帆後はライス国務長官主導の交渉論を支持する方向に旋回しているとされ、6者会談での妥決を本格的に検討している兆候が見える。今回、韓国の試みに米が緊密な協議を維持しているのは、このような脈絡にある。しかし、世論と議会の動向に大きな影響を受ける米外交の特徴から、突発的、偶発的状況が外交全般に影響を与える事態はいつでも起こり得る。
中国は基本的に韓半島の現状維持、北韓体制の漸進的変化誘導、北核問題の破滅的表面化抑制に重点を置く政策基礎を一貫して維持している。中国の政策的弱点とジレンマは北韓の瀬戸際戦略に基づく短期的危機局面に対応する効果的手段を持っていない点だ。
ロシアの場合はさらに制限される役割しか遂行できないでいる。これは90年代初頭に急速に対北関係を断絶し、韓国重視政策に転換した結果だ。プーチン政権は大国主義的外交戦略への復帰を推進し、その一環で東北アジア及び韓半島に対する伝統的な影響力の回復にも力を注いできた。しかし、経済力の欠如が障害になっている。
日本の場合は、日本自身の戦略的利害関係と国内政治の葛藤により、有効な外交力を駆使できないのが現実だ。アメリカと類似した深刻な意見対立が存在し、その外延には日本自身の安全保障政策、対アジア・対米関係の均衡など、日本の戦略的方向性を取り巻く潜在的顕在的対立と葛藤、統合的戦略の欠如という問題が存在する。
6者会談が再開されても北核問題の妥決が進展する可能性はまだ不透明だ。もし、アメリカが最終的に北核放棄の対価として、北韓の安全保障体制に対する関与姿勢を見せた場合は急進展する可能性もある。その形態は多者間安全保障になる可能性が大きい。
当面した北核問題の妥結には、北核の実態の客観的確認が最大の鍵になる。すでに開発保有したと推定される1、2発の核兵器とウラン濃縮計画の実状を明確にし、その解体を客観化することが妥決の前提だ。この過程で相互信頼が形成されるかが、6者会談の進展を左右する分水嶺になる。
(2005.07.06 民団新聞)