掲載日 : [2005-07-13] 照会数 : 10483
<民論・団論>歴史教科書・韓日離間策許すな
□■「つくる会」は摩擦煽る先兵■□
青年会中央本部 宣伝部・金武貴
◆右派が利用する歴史教科書問題
青年会中央本部は4月、韓日間の歴史認識摩擦をテーマにソウルで記者会見を持ち、こう強調した。
「日本人全体を非難すれば、韓流ファンが靖国神社に参拝し、『新しい歴史教科書をつくる会』(以下、「つくる会」)教科書を愛読書にするだろう。〈反日〉を利用して日本の排外感情を高めようとする一部右派勢力の策動にのせられてはならない。『つくる会』と右派政治家が煽る韓日対立に巻き込まれたくない日本人がほとんどだ。歴史歪曲に反対する良識ある日本の友人と共同しよう」。
韓国世論が日本全体を非難するかのように流れがちで、歴史歪曲の根源をなす政治勢力に焦点が絞られていないことを私たちは問題視してきた。一方では、歴史問題を韓国と日本の争いだと言い立て、愛国心を煽り悪用しようとする日本の右派勢力を糾弾してきた。
ドイツのネオ・ナチを見るまでもなく、偏狭な排外思想団体はどこにでも存在する。問題なのは、歴史歪曲をドイツが法律で禁止したのとは対照的に、日本では政治の中枢が背後で「つくる会」を支援してきた〈隠された事実〉なのである。
教科書議連(日本の前途と歴史教育を考える議員の会)を結成した安倍晋三氏ら右派指導者たちは、アジア侵略を合理化する運動を10年以上も展開してきた。彼らは極右の烙印を恐れて「つくる会」支持を公にはしないものの、同会の会合では〈安心して〉従軍慰安婦被害者を冒涜し、慰安婦自体が虚構であるなどと主張してきた。
◆公式謝罪を覆す一部政治家の愚
政権中枢を担う政治家が、特定教科書を普及する会合に出席している事実だけでも、外国人特派員らは大きな驚きを持って受け止めた。より深刻なのは、政治による「つくる会」支援が一般の日本人に一切認識されていないことだ。私の知る限り、政治家が「つくる会」の会議に参加していると聞いて驚かない人はいない。「つくる会」の副会長が教育委員として教科書を採択する立場にあることを不気味に感じない人もいない。124の圧倒的多くの修正要求を受けた問題教科書が、「つくる会」支持者で固められた教育委員会に〈最高評価〉を得たことも、まったく認識されていない。教科書採択はまさに仕組まれた〈八百長ゲーム〉の中で決行されようとしているのだ。
(各国報道機関が高く評価したこれに関する資料を是非活用して頂きたい。info@seinenkai.orgまで連絡を)
歴史教科書で一部の右派政治家は、申し合わせたように次のようなキャンペーンを張る。2点について注意を喚起しておきたい。
「日本政府は公式に、20回謝罪した。いつまで謝罪を要求するのか」。
安倍氏のこの発言には、「あなたが言動で21回裏切れば、20回の〈謝罪〉にどんな意味があるのか」を問おう。「強制連行」をテストで出せば「虚構を出題した」と訴訟を起こし、「創氏改名は朝鮮人が望んだ」と主張する「つくる会」の会合に参加してきた安倍氏に、謝罪を語る資格はあるのか。教科書議連の〈活動成果〉として、すべての教科書で慰安婦に関する記述を削除、もしくは後退させたこともそうだ。日本の子どもからは教訓を、被害者各国からは信頼を、そして先人の謝罪からはその真意を奪い去ることになる。
「戦争を美化している教科書など一つもない。読まずに他国の教科書に文句を言っているのではないか」。
こう言う町村氏(外相)こそ、読まないで「つくる会」を擁護している。〈日本軍を歓迎する現地の民衆〉〈植民地開発に尽力する日本〉〈ユダヤ人を救出する日本〉などの写真をまぶし、加害やアジア民衆の抗日運動の写真をすべて削除した教科書が何を企図するかは読み手の常識に任せよう。しかし、1000歩譲っても、「つくる会」教科書が重要な史実を隠蔽していることに反論の余地はない。従軍慰安婦、731細菌部隊、強制連行など、アジア諸国にとって日本に教訓として留めてほしい史実の一切を消去している。その教科書が戦争を美化していないというならば、被害者がもっとも伝えてほしい史実がなぜ、削除されているのかを問うべきだ。
◆日本の良心示す若者たちに感動
私はこの春、従軍慰安婦被害者の方々が肩を寄せ合って暮らす、ソウル近郊のナヌムの家を訪ねた際、将来に希望を持てるような光景を目にした。ハルモニたちの生活を助けるボランティアに多くの日本の若者がいて、過去の世代の悲劇に胸を痛め、ハルモニたちの傷を癒してくれていると思えたからだ。彼らこそ日本の良心であり、隣国に信頼される将来の日本を背負う友人だと確信した。
歪曲教科書をめぐる両国の緊張は、これで終わりにしたい。一部の右派勢力が日本の顔になってしまっている現状を、日本の心ある友人とともに変えよう。大多数の良識ある日本の友人に、これは4年前と同様、日本の良識を世界に示すときだと訴えたい。
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(2005.07.13 民団新聞)