掲載日 : [2005-07-13] 照会数 : 7603
歴史教科書巡り討論会…日本外国特派員協会
[ 「つくる会」歴史教科書の戦争をめぐる記述で批判が相次いだ討論会=6日、東京の外国特派員協会
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「つくる会」の作為突く
来年度から公立中学校で使用される教科書の採択が大詰めを迎えている。焦点の「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、「つくる会」)主導の歴史教科書をめぐって6日、採択推進側と反対側の公開討論会が東京の日本外国特派員協会で開かれた。
同協会主催によるこの異例の討論会は、国際社会の関心の高さと「つくる会」への厳しい視線があることをうかがわせた。100人余りの報道陣がつめかけた討論会でまず、特派員協会の代表者が「つくる会」に参加を求めたにもかかわらず、「各地の教育委員会で採択中に、特定の教科書だけを問題視して議論するのは不公平」などとして参加を拒否、中止を要求したことに触れ、「私たちは不公平なことは何もしていない。『つくる会』の反論は理にかなっていない」と指摘した。「つくる会」は白表紙本を使っての不法営業で、文部科学省から3度も注意されている。会場には「不公平とはよく言えたもの」と失笑がもれていた。
討論会参加者は6人。「つくる会」教科書に反対する側から子どもと教科書全国ネット21事務局長の俵義文氏、華人教授協会の王智新氏、在日韓国青年会中央本部の金武貴氏。賛成側からは秀明大学学頭で「つくる会」元理事の西部邁氏、聖学院大学講師で評論家の潮匡人氏、ジャーナリストの西村幸佑氏。
青年会の金武貴氏は「『つくる会』は、愛国心を煽りアジアと日本を引き裂こうとしている」とし、「(日本は謝り続けているというが)行動がともなっていない。20回謝っても21回それを言動で裏切ったら何にもならない」と指摘した。また、「実際の日本人は善良で誇り高い。ナヌムの家(従軍慰安婦被害者の施設)のボランティアの中に日本人の若者も多い。過去を歪曲せずよりよい韓日関係を創ろうとしている。こういう人こそ日本の顔になるべきだ」と主張した。
俵氏は「つくる会」教科書は「日本の侵略戦争を肯定・賛美し、戦争する国の国民づくりをめざす教科書」であり、「日本政府がこれまで公式に表明した国際公約に明らかに違反する内容を多く含んでいる」と批判した。さらに、「政権党の自民党が教育基本法第10条に違反して各地で『つくる会』教科書の採択を推進する異常な状況が生まれている」と指弾した。
王智新氏は「『つくる会』教科書は、前回に比べてむしろひどくなった。戦争の責任を全部中国になすりつけ、日本が被害者であったかのように書いている。次の世代に何を訴えようとしているのか。危惧せざるを得ない」などと強調した。
西部氏は「(太平洋戦争は)全面的な侵略であったかどうか。弱化したとはいえアジア解放という正義が消えることはなかった。日本国家の予防的自衛という要素もあった」と述べ、従軍慰安婦問題については「軍隊のイニシアチブで慰安施設をつくる、あるいは『女性を強制連行してこい』などという命令なりを日本軍が発したと考えるのはほとんど誇大妄想狂の世界」などと強弁した。
西村氏も「(議論をする前に)従軍慰安婦の問題も、それが歴史的事実として存在したのか、検証をすることが先決」と語り、日本軍の関与を否定したが、金武貴氏に「96年に国連でも報告されているし、日本政府も92年と93年に認めている」と一蹴された。
潮氏は教科書問題が起きた理由について「問題にする人がいるから」と述べ、多くの人々が「つくる会」の教科書を読んでいないのを逆手にとり、「特定の教科書が侵略戦争を賛美しているという発言があったが、具体的にどこにそう書かれているのか。私は該当個所はないと思う」などと逃げに終始した。
(2005.07.13 民団新聞)