掲載日 : [2005-07-27] 照会数 : 10677
<教科書>大田原市の採択、民団がデモ
[ 子供たちの未来のために−−と「つくる会」教科書採択反対を訴えた人々=22日、栃木県大田原市 ]
[ 大田原市教委へ撤回を申し入れた林宏・民団栃木本部団長(右手前)と鄭夢周・民団事務総長 ]
全国へ波及許さぬ…韓日の将来、損なうな
「つくる会」本採択の栃木・大田原市教委へ
【栃木】大田原市教育委員会が13日、「新しい歴史教科書をつくる会(以下「つくる会」)」が主導し、扶桑社が発行した歴史教科書を採択したことに対し、民団は同日、文教局長名で撤回を求める声明を発表、22日には現地で示威行動を展開するとともに、関係当局に撤回を直接申し入れた。「つくる会」とそれに癒着する教育委を糾弾する動きが全国で活発化している。教科書問題は天王山を迎えた。
民団栃木県本部と中央本部は、小沼隆教育長との面談を再三求めてきた。しかし、市教委側は「対応できない」との態度を変えず、この日の緊急示威行動となった。デモ参加者は地元の団員と婦人会員を中心に、前日の緊急全国事務局長会議の参加者と青年会活動家ら100余人。
緊急事務局長会議では、問題教科書をいち早く採択した現地で危機感を共有し、各本部担当地域での採択を阻止する決意を固めているだけに、大田原市教委の採択撤回を求め、全国への波及を許さないとの姿勢を全面に打ち出すものとなった。
示威行動は朝8時から市教委前で行われたビラ配りを皮切りに、街頭デモ、要望書伝達、報告集会と5時間に及んだ。
栃木本部の林宏団長、文炯鎬議長、中央本部の鄭夢周事務総長を先頭に横断幕やプラカードを掲げ、宇都宮地裁支部前から教育委までの約1・5㌔を行進したデモ隊は、「つくる会の教科書採択を撤回せよ」「教育長は説明責任を果たせ」などのシュプレヒコールを繰り返し、教育長、市長、議長に要望書を伝達すべく代表団を派遣した。
取材陣が殺到して身動きが取れないほど緊迫するなか、出張中という小沼教育長に代わって応対した平山正彦教育次長に、林団長らは「誤った歴史認識に貫かれた教科書で学べば、韓日の子どもたちにアツレキや偏見が生まれ、友好関係にひびが入る。どう責任をとるのか」と詰め寄った。平山次長は「答える立場にない。教育長との強い面会要望を伝える」と回答するにとどまった。林団長は「教育長に会うまで粘り強く対処する」と釘を刺し、「つくる会」教科書の採択撤回を求める要望書を手渡した。
市長や議長も不在を理由に、代表団と面会しなかった。婦人会県本部の崔龍珠会長は「応対した助役は、自分たちが決めたわけではないという態度に終始した」と憤懣をあらわにし、文議長も「議会は責任を回避した」と怒りをぶちまけた。林団長は「問題教科書の採択が県下の他地域に波及しないよう全力を尽くす」と不退転の決意を述べた。
抗議のFAX…どっと教委へ
大田原市教委には、採択決定当日だけでも700件以上の抗議FAXが送られたのを始め、県内からも批判が相次いだ。
大田原市の県北部歴史教科書と教育を考える会は「学問の研究成果に依拠せず、またかつての日本の侵略戦争を反省しないが故に、アジア諸国との間に深刻なあつれきを引き起こす性格を持っている」と批判。憲法を生かす会・栃木は「『平和教育』『人権教育』をないがしろにしながら『愛国心教育』に腐心し、子どもたちを再び戦場に送り込むことを目的とする教科書である」と指摘した。
(2005.07.27 民団新聞)