掲載日 : [2005-07-27] 照会数 : 10324
扶桑社 独禁法違反の疑い…内部文書で告発
[ 会見する上杉聡教授(中)と高嶋伸欣教授(右) ]
日本人学者…内部文書で告発
「つくる会」に工作資金か
「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史、公民教科書の採択をめぐり、公正が確保されず、適正な手続きも行われていないとして日本人大学教員2人が22日、版元の扶桑社=東京都港区=を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反」の疑いで公正取引委員会に告発した。また、税制上の疑惑も指摘し、併せて東京国税局にも捜査を要請した。
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告発したのは琉球大学教育学部の高嶋伸欣教授と関西大学文学部の上杉聡教授。公取委への告発はこれが7度目。4年前の採択時は扶桑社による検定合格前の白表紙本の配布行為などを問題にしてきたが、公取委が「つくる会」と産経新聞を共同事業者として認めず、第5次までの申し立てはすべて却下された。
しかし、今回は扶桑社から「つくる会」に資金と人員を提供していたことがうかがえる内部文書を添え、新たに「教科書改善協議会」も扶桑社の共同事業者であることが判明したとしている。
文書が作られたのは00年前半とみられる。ここには01年の教科書採択に向けた活動資金をどう捻出するかについて、扶桑社と「つくる会」、「つくる会」の別働隊とされる「教科書改善協議会」の4者が会議で話し合った経緯が記されている。
会議で「つくる会」側は採択に向けた活動資金として1億円が不足していると報告。これに対して当時の扶桑社担当役員は「1億すべては無理だが、なんとか充当する」と約束、人員派遣も「可能」と答えている。さらに扶桑社、「つくる会」と「教科書改善協議会」の三者が組織的に、共同して教育委員会や議会関係者に働きかけている事実も浮き彫りとなった。これらは独占禁止法に違反し、公取委告示にも抵触する行為だ。
このほか、扶桑社から「つくる会」に印税名目で少なくとも6000万円の裏金が支払われているとの疑惑も浮上した。事実ならば「贈与」にあたるが、扶桑社、「つくる会」とも正規の印税以外の受け渡しを否定しているため、東京国税局にも強制調査を要請した。
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具体的な違反例
▼扶桑社は04年7月下旬以降、同社の歴史・公民教科書を売り込むため少なくとも1都1府17県で白表紙本を教育委員会関係者らに閲覧させた。文科省に提出する「申請本(白表紙本)」を検定合格前に教師や教育委員会に配布することを独禁法は禁止している。文科省は過去3度、扶桑社の「ルール違反」を指摘した▼「つくる会」は小冊子「大人が知らない子どもの教科書」を04年から05年にかけて大量に教育関係者に配布した。そこには他社の教科書を中傷する記事が掲載されている▼産経新聞社も今年6月28日付紙面で他社の教科書記述内容を批判▼「つくる会」は「教科書改善連絡協議会」を動かし、学習指導要領の中の「わが国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」という項目を最重視して採択を行うよう全国の教育委員会に要請してきた。これは扶桑社版の採択に有利になる環境を整えるための採択活動とみなされる。
(2005.07.27 民団新聞)