掲載日 : [2005-08-17] 照会数 : 9011
扶桑社版採択の杉並区…撤回要求相次ぐ
[ 扶桑社版教科書採択の撤回を求める杉並区の住民たち=8月12日、杉並区役所前 ]
歴史教科書問題…撤回要求 相次ぐ
歴史教科書の採択が継続審議となっていた東京・杉並区教育委員会は12日、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編纂された扶桑社版を3対2で採択した。市区町村立の中学校用では栃木県大田原市についで2例目。委員会には約1000人の傍聴希望者が詰めかけ、区役所周辺は「反対」「賛成」のデモで騒然とした。
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民団東京団長声明「姑息な手法許せぬ」
扶桑社版を推した2人の教育委員は、99年4月に就任した山田宏区長が00年に選んだ。2対2のまま最後に「決断」したかっこうの納富善朗教育長は前区長室長で、01年の採択時に反対した前教育長の後任として任命されていた。他社を推薦した現場教師の調査票を無視したこの3人は、山田区長の肝いりだ。
教育委員会は首長への権限集中を防ぎ、中立的かつ専門的に教育行政に当たるのが原則で、首長は教育行政に直接携わることができない。太平洋戦争を大東亜戦争と呼び、日本の戦争政策を合理化してきた山田区長の政治的な意図は改めて問題になる。今後、採択の撤回を求める声が強まるのはもちろん、使用される場合でも現場での「教え方」が大きく問題にされそうだ。
民団東京本部の李時香団長はこの日、「アジアの民衆との心の決別を選択するもの。平和を求める市民の声に耳を傾け、採択の撤回を強く求める」との声明を発表した。声明はとくに、杉並区在住の中高生が姉妹都市であるソウル・瑞草区に9日から12日の日程で訪問するため、本来なら4日に採択すべきものを12日に延期した事実を重視し、「姑息な教育委員会の手法は、韓日友好のため杉並区の中高生を歓待した韓国の市民に対する背信行為」だと指摘した。
(2005.08.17 民団新聞)