コラム・特集 内容

 日本人拉致事件が連日報道され北韓の動向に対する関心が頂点に達している感があります。一方で、北韓に「帰国」した同胞を持つ家族が、拉致被害家族に自らの境遇を重ねてやりきれない思いを募らせている状況があります。

 1959年に始まった北送事業によって9万3340人もの同胞(日本人妻1800人などを含む)が、〞地上の楽園〟との宣伝に乗せられ「帰国」の途についたのです。

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総連、日本政府は責任を

 これらの人たちの内、日本人妻やその家族らが秘密裏に日本に帰ってきていたことが明らかになりました。

 彼らは貧困と抑圧に喘ぎ食糧にも事欠き、ついには北韓を脱出する以外に生き延びる道がなくなったのです。報道によると少なくとも40人以上が帰っているとのことです。

 日本外務省は北韓や中国を刺激しないようこの事実を伏せてきたようですが、同時に「人道的にも日本への入国を拒む理由はない」(政府関係者)との立場を取っています。

 私たちは日本政府の判断を妥当なものと考えます。北送事業を進めた責任からも彼らを暖かく迎えるのは当然のことです。

 ただ、北送事業の実質的な推進母体であった朝鮮総連が、この件についてなんらのコメントも出していないのはどうしたことでしょうか。

 北送事業は、北韓と結託した朝鮮総連が日本政府、赤十字社や政党、報道機関を巻き込み、民団の猛烈な反対運動を押し切って推進したものでした。

 朝鮮総連は事業を推進した当事者として、また日本で北韓の「準公館的な役割」を自認する立場から、彼らの日本渡航について責任ある態度を表明すべきではないでしょうか。

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定着へ最低限の支援必要

 北韓での「帰国同胞」に対する抑圧状況がなんら改善されず、なおも極悪な食糧状況が続くようだと、さらに多くの北送同胞が北韓を脱出し日本に帰ってくることが予想されます。

 日本に帰ってきた北送同胞らは、日本語の問題、職業の問題、社会への適応問題など、多くのハンデを背負い厳しい生活を余儀なくされています。また、北韓に残してきた家族のために日本での存在が知られるのを極度に恐れ、自由な活動が制限されているとも伝えられます。

 このような困難な状況を解決するため、日本政府は北送事業を推進した当事者として責任をもって受け入れ態勢を整備すべきです。

 彼らが安心して定着できる制度として、少なくとも日常生活に必要な日本語や生活習慣、社会制度を理解させる学習を施し、職業を斡旋する仕組みを作るべきです。

 日本政府は既に中国残留日本人孤児やインドシナ難民を受け入れた経験を持っているのですから。

(2002.12.04 民団新聞)

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