掲載日 : [2002-12-04] 照会数 : 4041
趙章恩のおもしろ韓国IT事情 <1> 「衰えることなき情熱」
[ ソウル市三成洞コエックスモールにあるマクドナルドの無料インターネットスペース ]
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趙章恩のおもしろ韓国IT事情
<1> 「衰えることなき情熱」■「IMF危機」が転換点…世界有数の強国に 「もしこの世にインターネットがなかったら」、一般市民の生活の中に深く根ついたネットライフを存分に楽しんでいる韓国では考えただけで恐いと言う人がほとんどだ。
韓国の国民総生産(GNP)対比インターネット普及率は世界最高だ。7月末現在韓国のインターネット利用可能世帯は86・9%、ブロードバンド加入世帯は76・6%に上る。(韓国統計庁調べ)
満6歳以上の人口中、PC利用率は63・0%、インターネット利用率は59・4%、PC利用者の94・3%がインターネットを使っているという調査結果が出た。小学生88・6%、中学生99・3%、高校生96・5%、大学生97・7%と世界的にも稀なインターネット国家である。
ネットの影響で人々の生活も大きく変わった。1時間1500ウォンのPCバン(インターネットカフェ)だけでなく、とにかく無料でインターネットを楽しめるスペースが至る所にあるのも特徴。道端のIP公衆電話では無料でメール送信、ファーストフード店にもPCがずらっと置いてあり自由にインターネットが使える。家庭ではブロードバンドは勿論、PCも子供一人一台買ってあげるのが親の道理だと思っている。PCとADSLさえあればTV、ラジオ、ゲーム機、電話とマルチに使えるので、後は何もいらないと言う新婚夫婦も続々登場している。
いつの間にか年齢や職業を越え韓国人なら誰でもインターネットで情報を探したり、メールのやり取りぐらいは出来て当たり前になってしまった。
韓国はどのようにして世界有数のインターネット強国になれたのか。それは97年の終り頃韓国を襲った経済危機「IMF」、この歴史的ターニングポイントなしでは語れない。大手企業が次々にリストラし、それでもだめでいくつもの企業が姿を消した行った中、韓国に残された選択はまさに「ベンチャー精神」、新しく芽生え始めた産業ITしかなかった。
政府はADSL等のインフラ産業を積極的に支援し、リストラされたサラリーマンは「PCバン」を創業し、就職難で途方に暮れた若い人達をネットベンチャーが救った。戦争ネットワークゲーム「スタークラフト」の爆発的な人気も後押しした。元々「パリパリ」に自慢話しが大好きなだけに、近所に負けまいとADSLを設置し始めたのが瞬く間に韓国全土ブロードバンド化されてしまった。
だが一つ言えるのは、それが何であろう自分に利益がなければ誰も新しいことに挑戦しない。インターネットは新しい生活のパラダイムと、そこから派生される限りないビジネスチャンスを与えてくれた。これを逃がさず経済復興に生かした、我々韓国人の衰えることのない情熱も見逃してはいけない。
2000年を境目にベンチャーバブルが消え、今は「世界一等」IT企業と誇れる技術を持った企業が、日本を含め世界各地で「IT強国韓国」の誇りを持ちがんばっている。一般ユーザー達も目が肥え、コンテンツやネットの使い方も想像を越える程多様化されている。
同胞達も負けてはいられない。日本のIT化をまず同胞達から始めてみてはどうだろう。難しいことではない。韓国式に小さいお店でもみんなホームページを作り、看板にURLも書き込んで見よう。ネットでどんどん情報を発信しコミュニケーションしてみよう。全く新しい生活が見えてくるはずだ。
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趙章恩(チョウ・チャンウン)氏のプロフィール 74年韓国ソウル生まれ。日本で高校まで卒業、韓国に渡り梨花女子大学卒業。韓国大手企業の日本担当部署を経て、現在、韓国のIT企業の海外進出サポート、ウェブサイト企画から構築までを指揮するプロデューサーになる。
また、韓国で唯一、日本とのインターネットビジネス交流を図る非営利団体JIBC(
http://www.kibc.org)の会長であり、韓国政府機関、公社のウェブサイト海外プロモーション顧問として、海外に向け韓国市場調査などのリサーチを行うJNJネットワークのシニアコンサルタントとして、日韓で雑誌や日刊紙、テレビ、ラジオなどでIT評論家としても活躍中。
著書として『韓国インターネットの技を盗め』(アスキー出版)、『日本インターネットの収益モデルを脱がせ!』(ドナン出版=韓国)。
(2002.12.04 民団新聞)