掲載日 : [2005-11-09] 照会数 : 9151
蘇った草創期…建国学校に幻のフィルム15本
[ 解放2周年を祝い行進する建国ブラスバンド
] [ 太極旗を持って万歳を叫ぶ同胞たち ]
在日史の宝に…創立60周年に向け編集作業急ぐ
【大阪】白頭学院建国学校(李英秀理事長、李正市校長)の草創期と当時の世相を映像に収めた貴重なモノクロフィルム15本がこのほど、建国校友会事務所から見つかった。映像は解放直後の希望に燃えた建国生の表情をイキイキと伝えてくれる。校友会では1・2期生から証言を集めてビデオに再編集し、来年5月の創立60周年式典での正式上映を目指している。
生き証人探し証言聞き取り
フィルムは同校校友会副会長で60周年記念誌編集長の高仁鳳さんが、第10期卒業生の朴炳昭氏の遺族から寄贈された遺品の中から見つかった。
15本のうち8㍉フィルムを除く16㍉7本についてはすでに高さんがデジタルビデオ化し、ごく一部の関係者に公開した。時間にして約1時間分になった。
16㍉フィルムには「建国生の一日」や「学校生活」「第1回朝鮮陸上競技」「解放2周年記念行事」といった撮影時のメモが残されていた。高さんら関係者が調べたところ、いずれも46年から57年にかけて撮影されたものとみられている。まさに在日の貴重な記録といえよう。
「解放2周年記念行事」では、大阪中之島中央公会堂に向かう同胞たちの様子が鮮明に記録されている。当時の在日は一つだった。進駐軍の見守るなか太極旗を高く翻しながら行進している。ブラスバンドは建国生が担当しているが、はつらつとした演奏ぶりだ。希望に燃えて、意気揚々と行進する様子がありありとわかる。
「建国生の一日」や「学校生活」を見ると、建国生はきちんと制服・制帽を身に着け、イギリス人教師から英語の授業を受けていた。スポーツはホッケーが盛ん。時間があると手作り運動場の拡張のため、スコップで穴を埋めたり、石を拾ったりするのが日課になっていたようだ。
フィルムは建国学校創立の立役者となった「白頭同志会」が、圭訓さん(建国初代理事長)の経営する会社を中心に活動していた様子も映し出していた。解放を喜ぶ李慶泰さん(同初代校長)の姿も捉えていた。
校友会ではフィルムに映っていた1・2期生を各地に訪ね、当時の様子を取材している。岩手県では当時の女子ホッケーチームのキャプテンを探し出し、証言を得た。
証言がそろいしだい、字幕やナレーションを入れるなど最終的な編集作業に入っていく。完成すれば、来年の同校60周年記念誌のテーマ「現在・過去・未来」にふさわしい「建国の宝」となりそうだ。金賢太郎校友会会長は「今、われわれが忘れていたもの(ルーツ)を今一度、という思いでこのフィルムを広く皆様に観ていただきたい」と話している。
29日に東京で、12月中旬には白頭学院で上映会を開く。問い合わせは校友会事務局(℡・FAX06‐6695‐6701)。
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往時の情熱再認識
李英秀理事長(5期生)の話
忘れかけていた歴史に感動した。貴重で珍しいフィルムであり、1世たちの民族を守るために学校を立ち上げた情熱があらためて伝わってくる。民族学校のみならず、今後の在日同胞社会の教育の在り方にとても参考になると思う。
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建国学校とは
解放直後の混乱期、祖国の産業と文化建設の意気込みに燃えた在日青年たちで組織した白頭同志会が46年、建国工業学校と建国高等女学校を創立したのが始まり。47年4月、新教育制度によって建国中学校に改称した。その後、高校と小学校、幼稚園を設立し、51年3月には学校教育法第1条による法的資格を得た。
(2005.11.9 民団新聞)