掲載日 : [2005-11-09] 照会数 : 8599
在日無年金障害者 谷間の救済先送り
責任は立法府に…大阪高裁
【大阪】国民年金制度のはざまに置かれた在日の無年金障害者7人が旧国民年金法の国籍要件の不条理を訴えた訴訟で、大阪高裁は10月27日、棄却判決を言い渡した。
判決は基本的に京都地裁の判断を踏襲しているが、原告の窮状に何らの配慮を示していない点は地裁判決よりもさらに後退した。
傍聴席からは「あーあー」というため息とともに「逃げるな」「裁判官に良心はないのか」といった不規則発言が飛び交った。
若林諒裁判長は、外国人の国民年金資格取得の要件を肯定するか否かは「立法府の裁量」とし、「著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、違憲・違法とならない」とした。
日本国籍と外国籍の間での差異が「やむをえない合理的な差別なのかどうか」についても国際人権規約よりも憲法14条を判断基準として原告側の主張を退け、立法責任で逃れた。立法不作為責任についても、これといった判断は示さなかった。
何のための裁判
弁護団からは「戦後60年もたっているのに立法の責任にした。司法の責任を問う公判をしているのに、なんのための裁判なのか」と不満と落胆の声が聞こえた。
坂和優弁護士は「裁判官は戸を閉めれば終わりなのか。憲法14条に反しても合理的な差別だと言い切った。冷酷な判断で裁判官の人間性を疑う」と怒りを隠さなかった。
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民生局長が遺憾の談話
関係法改正急げ
民団中央本部の李鐘太民生局長は10月27日、大阪高裁の棄却判決を「きわめて遺憾」とする「談話」を発表した。
現在43歳以上の在日韓国・朝鮮人障害者は、国民年金制度発足時から、本人の意思とまったく関係なく排除され、なんら救済措置が講じられることなく、今日に至っている。日本人障害者には支給されている無拠出の「障害福祉年金」の対象外とされ、無年金で23年間放置されている。彼(彼女)らの生活を支える高齢の家族もまた無年金状態にあり、その多くが生活上の困難を抱え、最低限の生活が成り立っていない。
本団は、このような制度的無年金障害者の早期救済のために国民年金法の改正を日本政府・国会に訴え、要望活動を続けてきた。また、地方自治体に対して、「法改正による年金受給」が実現するまでの暫定救済措置として、彼(彼女)らに対する「特別給付金」支給制度の実施・拡大等の要望活動を継続展開している。その結果、約600の自治体で、特別給付金を支給するまでになった。
全国知事会、全国市長会、全国国民年金協議会などでは、毎年のように無年金外国人障害者の早期救済のための国民年金法の改正等を、政府に対して要望している。しかし、日本政府はいまだに救済措置を講じようとしていない。今年4月から施行されている「特定障害者給付金支給法」でも、無年金の日本人学生・主婦障害者のみを対象とし、同様に救済されてしかるべき定住外国人無年金障害者は対象から除外されている。
本人の責任によらぬ定住外国人無年金障害者を、これ以上、社会保障制度から排除することなく、一刻も早く関係法を改正して制度的救済措置を講じるよう、日本政府および国会に強く望む。
(2005.11.9 民団新聞)