掲載日 : [2005-11-30] 照会数 : 9700
弁護士でも入居拒否 家主と大阪市を提訴
[ 記者会見する康由美弁護士 ]
弁護士でも入居拒否 家主と大阪市を提訴…康由美さん
【大阪】大阪市内に住む在日韓国人2世の弁護士が外国籍を理由に市内の賃貸住宅の入居を拒否され、家主と入居差別防止のための実効措置を怠ってきた大阪市を相手取って17日、大阪地裁に提訴した。
原告は大阪弁護士会所属の康由美さん(40)。訴状によれば、康さんは今年1月、友人と一緒に住む新居を大阪弁護士協同組合の提携業者に依頼し、気に入った物件が見つかった。手付け金を払おうというときに業者が家主に確認の電話をしたところ、家主は「過去にマナーの悪い中国人がいたことで、古くからの入居者が強硬に反対している」として入居申し込みを断った。
康さんは大学院生だった89年、神戸市内で下宿を探していたところ、韓国籍を理由に民間住宅への入居を断られている。今回も「国籍ないしは民族性を理由とする差別」と考えたという。これに対し、家主は「家族限定の物件だったから」と国籍差別を否定している。だが、仲介業者からの聞き取りによれば、「ファミリー限定とは聞いていなかった」。むしろ「友人同士の入居使用可」とされていたとの旨を明らかにしている。
康さんの弁護人は、家主の入居拒否行為は、基本的人権を保障した憲法14条1項、および国際自由権規約や社会権規約、人種差別撤廃条約に違反しているとしている。訴状では、このような差別を解消するために必要な立法行為を怠ってきた大阪市の行政責任も問い、家主と合わせて550万円の損害賠償を求めている。
大阪では国籍を理由に民間賃貸住宅の入居を断られた在日2世の建一さん(故人)が大阪地裁に提訴し、93年、家主に損害賠償の支払いを命じる判決が出ている。
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人権保障は責務 記者会見で心情語る
康さんは17日、訴訟代理人の丹羽雅雄弁護士らとともに大阪地裁記者クラブで会見した。
康さんは「これまでにも多くの先輩、友人が泣き寝入りしてきた。今日11月17日は乙巳条約締結からちょうど100周年の節目。様々な在日の歴史を考えて提訴に踏み切った」と述べた。こみ上げる怒りのためか、康さんの手は小刻みに震えていた。
日本の友人に話すと、「まだそんなことがあるの」と不思議がられ、在日の友人からは「断らない家主を探したほうがいい」とアドバイスされた。この言葉に「いかに泣き寝入りしている在日が多いか」を実感。康さんは、弁護士本来の職務である人権保障の観点からも「絶対引くわけにいかない」と思い直したという。
この提訴をきっかけに「いろんな議論がなされることを願っている」と締めくくった。
(2005.11.30 民団新聞)