掲載日 : [2005-12-07] 照会数 : 10405
「強制労働」全国1550カ所 史料・証言もとに確認
[ 神戸学生青年センター主催の「朝鮮史セミナー」で講演する竹内康人さん ]
日本人研究者が現場一覧表を作成 1939‐45年
【兵庫】近現代史研究家の竹内康人さ=静岡県浜松市=が「朝鮮人強制連行期(1939〜1945)朝鮮人強制労働現場一覧」をこのほど、作成した。竹内さんは「強制労働現場」とされる全国2679カ所について史資料・証言をもとに分析を加え、1550カ所については「強制労働現場として確認できた」としている。一部で流布されている「強制連行はなかった」論に対する有力な反証となりそうだ。
「一覧」には「連行先事業所」「業種」「所在地」「強制連行の有無」「典拠」「参考文献」の順で明記されている。文献に上っている現場がどこにあるのかはもとより、さらに詳細に調べるための手がかりも得られる。
強制連行・労働の調査活動に関わっている全国の調査グループからは「こんな資料が欲しかった」との声が上がっている。いまやバイブル的な存在ともいう。一覧表作成に先だって竹内さんはまず、「強制労働現場」の地図づくりに取り組む。10数年も前のことだ。
コンビニで全国各地のロードマップ40数冊を購入し、市民運動の調査報告と当時の厚生省資料を丹念に突き合わせていった。旧地名と現在の地名の照合など、作業は困難を極めたが、1年余りを費やして「戦後50周年」の節目に完成した。引き続き「戦後60周年」の今年に向け、詳細な一覧表の作成を急いでいた。
竹内さんは11月19日、神戸学生青年センター主催の「朝鮮史セミナー」に招かれ「全国強制労働現場一覧表を作成して」と題して報告した。
講演のなかで竹内さんは、「一覧表作成によって約1550カ所の強制連行現場を確認した。疑わしきは連行現場としなかった」と述べ、あくまで実証的な調査に基づくものであると強調した。
残る1220カ所のなかにも就労が確認できたところが約600カ所あるという。残りは未確認。調査が進めば「連行現場」はさらに増えるとみられている。
全国1150カ所を業種別に見ると、鉱山・炭鉱が約450で最多。45年に増えた軍需工場は約320。このほか、軍工事・飛行場、発電工事を含む土木建設、運輸港湾などが続く。地域別では北海道が200カ所と最も多い。福岡は140カ所。ただし、九州北部と長崎を含めると200カ所を超す。続いて兵庫90カ所、大阪50カ所の順。
竹内さんは「被害者の尊厳の回復のため、これからも民衆の視点から日本人の歴史認識を問い直していきたい」と話している。
今後の課題としては、現存する資料から可能な限り被害者名簿を作成していくこと。軍人・軍属については名簿を再整理し、誰がどこに連れて行かれたのか表にしていきたい考えだ。
日本政府・企業に対しては厚生年金名簿と供託名簿、および企業の殉職者名簿などの公開を求めている。
(2005.12.7 民団新聞)