掲載日 : [2005-12-07] 照会数 : 11316
<平統委近畿協>韓半島の平和 多角論議
[ フォーラムでは韓・日・在日の論客が意見を闘わせた=2日、大阪 ]
[ 基調講演をした李在禎氏 ]
平統委近畿協 初のフォーラム
韓日協調が必須 遵守すべき6者合意
韓・日・在日学者ら提起
【大阪】民主平和統一諮問会議の日本地域近畿協議会(李龍権会長)は2日、大阪市内のホテルに約300人の諮問委員らを集め、平和統一フォーラムを開催した。今年7月に新しく設立された日本地域の4つの協議会のうちで初の催しとなった。李在禎首席副議長の基調講演を受けた2つのセッションでは、「韓半島の平和体制構築」や「6者会談以降の朝日国交正常化の課題と展望」について、韓・日・在日の学者が討論した。
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基調講演「在日も共同歩調を」
李会長の開会辞に続きあいさつに立った金宰淑・日本地域副議長(民団中央本部団長)は、「韓半島の非核化と恒久平和を柱に、9月の6者会談で合意した共同声明が着実に遵守されるよう注視したい。民団は南北共同声明を契機に、朝鮮総連との和合・交流をより一層推進してきたが、今後とも次世代に希望と勇気を与えるため統一に向けて汗を流そう」と訴えた。鄭華泰駐大阪総領事も「盧武鉉大統領の参与政府は、韓半島での戦争放棄と統一に向け、南北の和解と協力に多くの成果を収めてきた。今後も在日諮問委員の共同歩調を」と求めた。
続く基調講演で李在禎首席副議長は「過去に戦争と冷戦の対立をしてきた6者会談の当事国が、韓半島の平和的な関係構築のために多国間の安保体制形成に合意したことは歴史的な進展」と評価しながら、「東北アジアの平和のためには北韓との関係正常化が必要であり、朝日国交正常化が韓半島の平和定着に決定的に寄与する」と語った。
フォーラムの第1セッション主題は「韓半島の平和体制構築と東北アジアの多国間安保」。中野寛成前衆議院副議長を座長に、慶応大学の小此木政夫教授が主題発表した。これを受け、韓国国民大学の李元徳教授は「日本国内には、北の核はいずれ統一国家の核になるという認識から韓国が核を容認しているのではと考える向きもあるが、韓国政府は核開発を絶対容認しない」と明言した。早稲田大学の重村智計教授は「韓国の努力で6者会談を常設化して窓口をソウルに設置し、核問題だけでなく、教育・投資・経済問題なども話し合う必要がある」と提案した。大阪市立大学大学院の朴一教授は「朝米に約束を守らせるためにも6者会談は継続すべきだ」と述べた。
第2セッションは「6者会談以降の朝日国交正常化の課題と展望」を主題に、韓国尚志大学の徐東晩教授が座長を務め、立教大学の李鍾元教授が主題発表した。パネラーは神戸大学大学院の木村幹教授、同志社大学の村田晃嗣教授、佐賀大学の森善宣教授で、木村教授は「北を信用しない日本世論を和らげる役割は韓国にある」と語った。村田教授も「韓米関係の重要性を韓国民がもう一度認識する必要がある」と注文した。11月19日から21日まで北韓を訪問してきたという森教授は「韓半島での戦争を避けるために、日本の経済援助など、韓日が協調して北に働きかけていくべきだ」と促した。
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フォーラムの主要見解(要旨)
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▽基調講演「東北アジアの平和と日本の責任」(李在禎首席副議長)
6者会談は北韓の核兵器と核開発プログラムの危機を乗り越え、韓半島における平和体制を議論する段階にたどり着いた。9月19日の「共同声明」では、北韓と米国、北韓と日本の外交関係正常化という目標が設定された。この合意事項を実行に移す実践的な姿勢が必要だ。
韓半島の平和は南北関係だけで成立するものではなく、日本と中国、日本とロシア、米国と周辺諸国との関係が運命づけてきた。最近の日本の政治的な変化は脅威であり、韓国が首相らの靖国神社参拝を外交問題にするのは、軍事力拡大に発展する可能性を含むからだ。また、軍拡は国際的な協約の破棄を意味する。南北間に180万の軍隊が維持されている現状に照らすと、日本の軍拡は韓半島の軍事的な緊張関係解消に何の役にも立たない。
▽第1セッション「韓半島の平和体制構築と東北アジアの多国間安保」(小此木政夫・慶応大学教授)
冷戦後、北の体制は崩壊するとの意見が大勢を占めたが、北は生き残りをかけて核開発に着手した。米のクリントン政権は、北の長期的変革政策をとったが、ブッシュ政権は「悪の枢軸」と批判し対決姿勢をとった。
核問題について、軍事的手段で短期的に解決するか、中期的な交渉でロードマップづくりをするかという選択肢を超越し、今は6者会談が鍵を握る。核放棄が先か、軽水炉が先かという主張の差はあっても、多国間で合意した行動を遵守すべきだ。
▽第2セッション「6者会談以降の朝日国交正常化の課題と展望」(李鍾元・立教大学教授)
「共同声明」合意の背景には、米の政策転換があった。イラク戦争の経験から軍事力の限界を悟ったブッシュ政権は、6者会談を軸にするようになった。一方、朝日が国交正常化交渉にもたつくのはなぜか。米の核戦略の枠組みの中、朝米関係の進展をにらみながら、世界情勢に対抗するために日米同盟の強化や防衛の整備を模索したからだ。日本側には国交交渉に否定的な思いが強いが、脅威論だけでなく、韓半島の外交戦略にバランスをもたせるべきだ。
(2005.12.07 民団新聞)