掲載日 : [2005-12-14] 照会数 : 11003
【ドイツW杯】韓国、「4強神話」の再燃なるか
[ 前大会でベスト4進出を決め、喜ぶ韓国イレブン ]
仏・スイス・トーゴと競うG組
来年6月9日から7月9日まで、ドイツ各地で激戦を繰り広げるサッカーW杯の組み分けが決まった。
韓国が属するのは、フランス、スイス、トーゴと同じグループG。ブラジル、クロアチア、オーストラリアとともにグループFに属することになった日本と比べると、比較的楽な組に入ったというのが韓国メディアの論調だ。
というのも、フランスとの過去の対戦成績は2戦2敗と負け越しているが、98年W杯王者は世代交代がうまく進まず、ベテラン頼り。かつてのような圧倒的な強さを誇っているわけではない。
欧州地区予選プレーオフを勝ち上がってきたスイスは、8度のW杯出場を数えるが、欧州勢の中でも比較的力が落ちるとされており、アフリカ予選を勝ち抜いたトーゴは、W杯初出場国。スイスとトーゴとは初対決ながら、過去の実績や経験値では韓国が優位。
「フランスが強豪国であることに違いはないが付け入るスキが十分にあるし、スイスやトーゴとは互角以上。韓国が出場した歴代W杯でもっとも恵まれた組み分けだ」
それが韓国メディアの論調なのである。まして前回02年大会では、アジア初のベスト4進出を遂げた。それゆえにドイツでも「4強神話」が再現されることを期待している人も多い。
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不調期脱し手応え アウェー・守備対策に課題
ただ、前回02年大会は地元開催。サッカーの世界では、「ホーム・アドバンテージの有無が勝敗を多く左右する」といわれているが、韓国快進撃の背景には熱狂的な地元サポーターたちの後押しが大きく作用したことを考えると、アウェーでの戦いとなる06年W杯は、目標設定を16強進出に定めるのが現実的だと言える。
ならば、韓国のベスト16進出の可能性は−−。少なくもと半年前までは、その可能性は低かったと言わざるを得ない。
周知の通り、02年W杯以降の韓国はスランプ続きだった。04年W杯アジア一次予選ではFIFAランク140位台のモルティブに痛恨のドロー。その責任を取る形でウンベルト・コエリョ監督は辞意を表明し、後任となったジョー・ボンフレール監督もクウェート、ウズベキスタン、サウジアラビアと同居したアジア最終予選で大苦戦の連続だった。
A組2位でドイツ行きの切符を手にしたが、サウジアラビアに連敗を喫する不安定ぶりを露呈し、結局、ボンフレールも辞任した。02年W杯の熱狂を忘れられない国民たちが寄せる過度の期待と重圧が監督を追い込み、チームは混乱の最中にあった。
そんな韓国代表再建のために、KFAは今年9月、94年W杯と04年欧州選手権で母国オランダを率いた経験を持つディック・アドフォカート監督を招聘した。
02年W杯時にヒディンクの片腕を務めたピム・ファーベークを参謀役に従え、さらに〞韓国のカリスマ〟洪明甫をコーチとして入閣させた新指揮官は、10月のイラン戦(2‐0)、11月のスウェーデン戦(2‐2)、セルビア・モンテネグロ戦(2‐0)と、まずまずのスタートを切り、その評価を高めている。
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主力選手、欧州で活躍中
元韓国代表コーチで現在は富川SK監督の鄭海城氏も言っていた。
「アドフォカート監督が来て選手たちは自信を取り戻した。個々の実力は02年W杯時を比較しても引けをとらないだけに、今後どんなチームを作り上げるか楽しみだ」
実際、戦力的には申し分ない。英国・プレミアリーグの名門、マンチェスター・ユナイテッドでプレーする朴智星を筆頭に、李栄杓、薛鉉、車ドゥリ、安貞桓ら02年4強戦士たちは欧州でさらなる経験を積んだ。金斗、金東進らアテネ五輪世代や朴主永、金珍圭ら05年ワールドユース組も頭角。そこに趙源熙、李浩ら新戦力も加わり、チーム内競争はいつになく激しくなっている。キーマンとなる朴智星をはじめ、攻撃陣のタレントは02年時よりも豊富だと評判である。
ただ、守備は不安定で駒不足。組織力も備わっておらず、攻撃も個人技任せというのは否めない。それでいて本番までの時間は限られる。ヒディンク前監督と比較される宿命にあるアドフォカート監督だが、しかし、その言葉は頼もしい。
「ヒディンクとの比較やW杯4強という前回の成績は負担にならない。むしろ、そうしたプレッシャーに挑戦できるので韓国を選んだ。しっかり準備すれば、ドイツでも02年W杯に接近する結果を出せると信じている」と語った指揮官は、W杯抽選会後にも力強い言葉を口にした。
「ドイツW杯では、前回のようなホーム・アドバンテージは期待できない。本番に向けて遠征を多く実施し、経験を積んで自信も深めていかなければならない。本番で好成績を残すためには、これからの準備が大切だ」
そして、来年1月から2月にかけて集中的な海外遠征を実施することを発表。ドバイ、サウジアラビア、香港、アメリカなどを転戦しながら、計8試合・6週間に及ぶ海外遠征を行なうとした。世界的にも異例とされる6週間の海外遠征でアドフォカート監督が狙うのは、チーム力の底上げであるに違いない。そこでチームの骨格を固め、組織力を強化することができれば、ベスト16進出の可能性も高まってくるに違いないだろう。
組み分け抽選会も終わり、キックオフまでいよいよ半年に迫ったドイツW杯。アドフォカート・コリアに与えられた時間は限られているが、土壇場になればなるほど、驚異の集中力と底力を発揮するのが韓国である。本番に向けアドフォカート・コリアの成長と進化に、熱い視線を送りたい。
(スポーツライター 慎 武 宏)
(2005.12.14 民団新聞)