掲載日 : [2005-12-14] 照会数 : 17318
<地方参政権>参政権獲得 待ったなし
[ 問題の停滞状況打破を討論したシンポ=10日 ]
共生確立へ不退転 地域住民に当然の権利
日・韓・在日シンポで、両国議員が確認
【大阪】地方参政権の早期実現を求めるシンポジウムが10日、定住外国人の地方参政権を実現させる日・韓・在日ネットワーク(参政権ネット)と民団大阪府本部が主催し、大阪市内の研修センターで開かれた。昨年11月の東京、ソウル開催に続く今回は、今年6月30日に韓国で永住外国人の地方選挙権法が成立したことを受け、日本の停滞状況を打開しようとの意図から、韓日の国会議員が直接討論する初のパネルディスカッションとなった。約300人の参加者は、アジア初の外国人選挙権が韓国で実現したことを追い風に、新たな展望を切り開いていくことを再確認した。
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韓国での立法を先例に
主催者あいさつで民団大阪府本部の金昌植団長と参政権ネットの朴慶南共同代表はそれぞれ韓国国会の英断を高く評価した上で、「参政権獲得で多民族共生社会の確実な一歩を」と強調した。民団中央本部の金宰淑団長も、「この60年間、在日は日本社会に応分の寄与をしてきたが、自分の町を住みやすくするための社会参画の道すら閉ざされている。これ以上先送りすることなく、早期に実現を」と訴えた。
続いて参政権ネットの佐藤信行事務局長が、韓国での「選挙権成立」の背景として、「在日の闘いに正当性があったからだ」としつつ、「不条理を正そうという強靭な意志が韓国にはある」と評価した。
パネルディスカッションは参政権ネットの田中宏共同代表と民団中央本部の徐元国際局長をコーディネーターに、韓国側からハンナラ党の金淇春議員(韓日議連副会長・在日韓国人法的地位委員会委員長)、ヨルリンウリ党の趙培淑議員(在日韓国人法的地位委員会副委員長)、日本側から公明党の冬柴鐵三幹事長(日韓議連副会長・在日韓国人法的地位委員会委員長)、民主党の山本孝史議員が参席した。
冬柴議員は「日本に生まれ育ち、いずれ骨を埋める在日の人々を、日本人が差別するのは許されない」と基本的な考え方を述べるとともに、地方分権推進法に携わった経緯も踏まえながら「外国籍住民が首長や議員を選ぶのは当然だ」と口火を切った。
金議員は「在韓外国人団体から参政権要求があったわけではないが、民団の絶え間ない要求が、外国人にも人権保障をするという視点に着眼させた。法改正によって、韓国では大統領選挙、国会議員選挙以外の選挙に、永住外国人が参与することができるようになった」と経緯を述べた上で、「地方参政権を在日同胞に対する恩恵だと思ってはならない。世界の指導的国家になったという日本が、在日を含む外国人全体に対する人権保障の面でも先進国並みになってほしい」と迫った。
民主党の山本議員は、「自民・自由・公明の3党合意だった選挙権付与が、なぜ6年も実現できないのか」「法案提出のたびに内容が後退していくのはなぜか」と冬柴議員に矛先を向けた。趙議員も「1500を超える自治体が意見書を採択しているのに、政治家がこれを実現させないのは理解ができない」と疑問を呈した。
これに対して、冬柴議員は「反対議員に直接話す機会を設けてほしいと首相に要請している。次期国会での採決要望も伝えた」と明かした。
金議員は「『選挙権がほしければ帰化を』という帰化論者は、国際的な趨勢に逆行する国粋主義者であり、先進国日本のとるべき態度ではない。日本人としての自負心をわれわれに感じさせてほしい」と注文をつけた。
冬柴議員は「世界に誇れる人権国家を構築するために、あきらめず、粘り強く闘っていく」と決意を表明した。
田中代表は「両国議員による初の議論は意義深かった。韓国の法改正を受け、新しい段階での問題追求の手立てが見えてきた。実現のためにより一層各自が各地でがんばろう」と締めくくった。
婦人会や青年会の特別アピールの後、丹羽雅雄弁護士が「参政権獲得はこれまでの差別・排外ではなく、民族などの違いを認める開かれた共生社会の試金石になる」と総括した。
(2005.12.14 民団新聞)