掲載日 : [2005-12-21] 照会数 : 6872
今年の踏ん張りを、創団60周年成功へ
[ 在日と日本の子らがなごやかに競った運動会=9月4日、東京・新宿 ]
多様な課題遂行…民団の声価高めた
2005年を送るにあたって、本紙編集部は民団を中心とした在日同胞社会の重大ニュースを選び、15本に絞り込んだ。別掲の「今年の重大ニュース」を参照されたい。この一覧を見るだけでも、大規模な事業をよくも同時進行でこなしてきたものだ、と改めて思わせる。なかでも、日本にナショナリズムが強まり、韓日間の歴史認識摩擦が再燃した状況下で、歪曲歴史教科書の採択を再び阻止し、在日100年を記念した在日韓人歴史資料館をオープンしたことは、在日同胞社会に大きな自信をもたらした。来年の民団創立60周年に向けて、弾みになることは疑いない。この1年を振り返ってみよう。
民団は自らの事業や韓日関係の歴史的な節目が重なり合った今年、歴史認識摩擦がいつになく激しくなるのは避けられないとの展望に立ち、緊張感を年初から維持しつつ多様で多難な課題に果敢に取り組んできた。この1年を一言で総括すれば、共生理念を高く掲げる民団の声価を韓日両社会で、いつになく高めた年と言えるだろう。
深めたかった歴史認識論議
民団は韓日基本条約締結40周年(6月22日)、祖国光復60周年(8月15日)、乙巳保護条約締結100年(11月17日)と続く大きな節目が、在日同胞はもちろん韓日両国民の歴史認識を深める好機になって欲しいと願った。そして、国交正常化40周年を記念して設定された「韓日・日韓友情年」を意味あるものにしたいと考えた。
なぜなら、双方でナショナリズムが高まりを見せている時期だけに、歴史認識の研さんをないがしろにする感情的対立が深まれば、韓日間に長期にわたる禍根を残しかねないからだ。その第一の焦点として、8月中に中学校用歴史教科書の一斉採択があり、韓日間のアツレキが前回採択時以上に激しくなるのは避けられないとの判断があった。この懸念は、島根県議会が3月に「竹島(独島)の日」条例を制定したのにともない、前倒しで一挙に現実化した。
韓日親善への基本線は不動
しかし、民団のスタンスは不動だった。自らの本来の事業を完遂する、韓日親善交流の実を蓄積する、両国関係を阻害する誤った歴史教科書の採択を阻止する、この三つに全力を注いだ。歪曲歴史教科書の採択率を0・4%に封じ込む一方で、相次いで打ち切られた韓日民間交流を再開させ、愛知万博の後援事業に全力を傾けたばかりか、9月の東京・新宿での「オリニ大運動会」が象徴するように、日本の自治体を巻き込んでの韓日交流をむしろ拡大させた。
状況にぶれないこうした取り組みは、日本の市民団体や自治体に民団への共感をさらに広げ、時に安易な「反日」に流れがちな韓国への強いメッセージともなった。
民団のインパクトは韓国をも変えつつある。韓国国会が6月に成立させたアジア初の永住外国人地方選挙権は、民団の絶え間ない働きかけが外国人の人権保障に着目させた結果だと国内で評価されているのがその典型だ。民団はこれに満足することなく、韓国に自らの存在と主要事業が持つ意義を連続してアピールしてきた。
南北和解の先駆となり、同胞和合を牽引した総連傘下同胞の墓参団事業30周年、在日同胞の祖国への思いを体現する望郷祭の第30回行事などを韓国で相次いで挙行し、ソウルで「在日100年・民団60年」の写真展を初めて開催した。さらに、本紙の韓国版を月刊で発行した。これらを通じて、本国の人々に在日同胞の歴史と実像を知らせ、「未来をともに切り開こう」とのエールを交換し合うなど、連帯への土壌を耕すことができた。
在日100年貴重な資料館
そして在日100年を記念する「在日韓人歴史資料館」のオープンである。これは、在日同胞にはすでに大切にすべき歴史があり、それはまた韓国と日本の過去・現在・未来を照らし出すものであることを内外に闡明(せんめい)するものとなった。自らの歴史観を再構築し、後世がアイデンティティーを確認する場として重みを持つだろう。
人権尊重と韓日友好を基礎とした共生理念で一貫した民団はこの1年で、両国を機軸にした東北アジアの平和と安定を願う人々に、民団が力強い同伴者であることを知らしめたといっても過言ではない。多事多難という言葉が真実味を持った05年は暮れていく。
今年の踏ん張りがもたらした自信を、来年の創団60周年の成功を保証する決意に転化させたい。
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本紙が選んだ今年の重大ニュース
●歴史資料館オープン
在日韓人歴史資料館が11月24日、3年余の準備の末、中央会館別館にオープンした。在日100年の苦闘と躍進の足跡が分かりやすく展示されている。
●臨時大会で規約改正
2月24日の臨時中央大会で、将来を見すえ、中央委員会の権能強化と選挙人制度の導入のほか、団員資格に「日本籍者」を盛り込む規約改正を行った。
●歪曲教科書を再び阻止
来年度から使用される公立中学校の教科書採択をめぐる攻防で、民団は市民団体と協力、「つくる会」主導の歪曲教科書採択率を0.4%に封じた。
●ソウルで在日100年写真展
ソウルで民団初の写真展「嗚呼!在日同胞」が10月5日から15日までプレスセンターで開催され、約5000人が民団と在日の歴史に見入った。
●愛知万博後援を大々的に
「自然の叡智」をテーマに愛知万博が3月25日に開幕した。民団愛知県本部は参観団誘致などに大きく貢献。韓国館の入場者は349万人に達した。
●墓参団と望郷祭が30年
総連系同胞対象の墓参団が9月、30周年を迎えた。参加者は延べ1万5千余人。また、9月30日の第30回望郷祭では、遺骨となって故国へ帰った強制連行などの犠牲同胞の霊を慰めた。
●鄭香均氏が最高裁で敗訴
最高裁は1月26日、在日同胞2世の保健師・鄭香均さんの管理職選考受験を拒否した東京都の国籍要件を合憲とする逆転判決を言い渡した。
●韓国で地方選挙権成立
6月30日、アジア初の永住外国人地方選挙権法が韓国で成立した。永住3年、19歳以上が対象で、大統領・国会議員選挙を除き投票できる。
●光復60周年、総連との和合進む
光復60周年と6・15共同宣言5周年を記念した民団と総連との地方本部単位の合同祝祭が、山口、京都、大阪で開催され、和合ムードを高めた。
●民団新聞が創刊2500号に
「生活人」「国際人」の理念を掲げ、47年2月21日に創刊、今年4月27日付で創刊2500号を数えた。10月から月刊の韓国語版を発行中。
●新・平統会議が出帆
第12期民主平和統一諮問会議(盧武鉉議長)が7月1日に出帆した。民間外交を強化する観点から日本と北米地域に海外副議長を新たに置いた。
●急増する韓国語学習者
民団の働きかけや韓流の影響でNHKハングル講座のテキストが過去最高の22万部に。また、韓国語能力試験の受験者も7998人と最高記録を更新。
●震災10年で共生前面に
阪神大震災から10年で民団兵庫は1月22日、「追悼と共生・共栄の集い」を外国人代表と開催、犠牲者を哀悼し「多文化共生宣言」を宣布した。
●本国投資協会が30周年
「漢江の奇跡」を支えてきた在日韓国人本国投資協会が3月29日、創立30周年記念式典を開催した。在日同胞は海外同胞投資の80%を占める。
●民族信組の統合続く
近畿産業信組と長崎商銀は11月21日、来年6月をめどに合併契約の調印式を行った。九州幸銀と佐賀商銀も12月19日に正式合併した。
(2005.12.21 民団新聞)