コラム・特集 内容

 人権週間が始まった今月4日、参議院憲法調査会で基本的人権に関する論議がありました。自民党のある有力議員は、戦前在日朝鮮人には参政権があったことに詳しく触れ、このような歴史を踏まえたうえで、「外国人の地方参政権は同じ地域に住む人間として認めるべきだ」という趣旨の意見を述べました。あわせて、永住外国人の約9割が在日韓国・朝鮮人である実態に言及し、「憲法を解釈するときに足りないものは立法府で補っていく」という観点が必要との問題提起もしました。

■国際人権規約も明文化

 また野党の側からも、「外国人の人権保障について憲法解釈は曖昧なままであって、その明確な規定が必要だ」との提案がなされました。国会の憲法調査会の「基本的人権」に関する討議で、在日韓国人をはじめとする永住外国人の地方参政権問題が論議され、日本国憲法に「外国人の人権」の明文化の必要性が提起されたことを、本団は積極的に評価したいと思います。

 日本が批准している国際人権規約の市民的及び政治的権利に関する国際規約2条には、締約国に対して人権実現の義務が規定され、同25条には、「すべての市民は、いかなる差別もなく、また不合理な制限なしに」、参政権が付与されることを規定しています。日本国憲法98条には、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを約束する」としています。

 実態はどうでしょうか。

 日本政府は戦後一貫して私たちを「国籍」によって差別してきました。この間、多くの日本市民の支援のもとに、忍耐強く一歩一歩差別と偏見の壁を乗り越えてきました。80年代以降、公営住宅への入居、国民年金への加入、地方公務員への部分的採用、指紋押捺の廃止などを獲得してきました。

■早急に地方参政権付与を

 しかし、いまだ「住民の人権」として最も基本となる地方参政権が与えられずにいます。地方自治に住民として制度的に参与できずにいるのです。

 すでに最高裁は、永住外国人に地方レベルの選挙権を付与しても「憲法上禁止されない」との判決を出しています。

 これによって違憲論に終止符が打たれ、帰化論も抑止されました。政府と国会に法改正を求める自治体の意見書採択は、この9年間で実に1508議会に達しています。すでに自治体では外国人住民に独自に住民投票権を付与し始めています。

 この数年、国会で継続審議中の「永住外国人の地方選挙権法案」には「外国人の人権」を保障するという大きな意義があります。これの確立が日本の発展に貢献し、広い意味で日本の国益に資するということに深く思いを致すべきです。いつまでも排除と同化策では解決にならないのです。

(2002.12.11 民団新聞)

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