掲載日 : [2006-01-25] 照会数 : 10467
補助犬への理解もっと深めて 朴善子さん
[ 補助犬ラブラドールとのスキンシップを図る子どもたち(世田谷区立桜丘小、右が朴さん) ]
盲導犬、聴導犬、介助犬‐3種の補助犬を連れて全国の小・中学校を回っている在日韓国人2世がいる。これは「補助犬介在事業」と呼ばれ、情操教育の一環として確かな効果が確認されている。子どもたちは犬の気持ちを思いやり、知らず知らずのうちに自分より弱い者、異質な者への接し方を学んでいく。口づてで評判を呼び、いまや全国から引っ張りだこの人気だ。
異質な者との共生めざし 小・中学校回り啓発活動
この在日2世は朴善子さん(41)。補助犬の育成と障害者への無償貸与を行っている福祉団体、NPO法人日本補助犬協会(鳩山由紀夫会長)=東京都世田谷区上北沢=の副理事長を務める。
障害者の目となり、耳となる3種の補助犬を総合的に育成し、無償貸与しているのは日本補助犬協会だけ。03年の身体障害者補助犬法の完全施行を前に補助犬の育成に携わっていた訓練士や歩行指導員が立ち上げた。朴さんは当時、日本盲導犬協会に就職していたが、補助犬協会の立ち上げと同時に参加した。
教育現場に補助犬を介在させる事業は、補助犬の育成・貸与、社会の受け入れに対する啓発とともに、日本補助犬協会の主要な事業のうちの一つとなっている。学校からは総合的な学習の時間に呼ばれることが多い。
玄関のチャイムや電話の着信音に反応し、朴さんに知らせる聴導犬。介助犬は車いすに座った朴さんが落とした財布を拾い、新聞も運ぶ‐。朴さんがそれぞれの補助犬が担っている仕事ぶりを見せると、子どもたちは目を輝かせる。
朴さんが補助犬をつなぐハーネスを外した。おそるおそる近づく子どもたちに、緊張して身を固くする補助犬。朴さんから補助犬がリラックスするやり方を教わり、実践した子どもたちの表情が急にイキイキとしたものに変わった。子どもたちの思いやりの気持ちが補助犬に伝わったのだ。そばで見ていた教員は「ふだん見せない表情が見られた」とびっくり。
身体障害者補助犬法が完全施行され、公共施設ばかりかレストランや喫茶店など民間施設でも補助犬の同伴受け入れが義務づけられている。だが、補助犬に対する社会的偏見はまだまだ根強い。
朴さんは「補助犬も世間では異質な者。私たちと同じマイノリティーという存在なのです。知らないから拒否する。いろんな人たちで社会が構成されていることを順応性の高い子どものうちから知ってほしい」と話す。
日本補助犬協会の運営資金は賛助会員の会費や寄付金などでまかなっている。問い合わせは℡03・3290・2019。
(2006.1.25 民団新聞)