掲載日 : [2006-01-25] 照会数 : 6802
歴史資料館開館2カ月 在日の苦闘に広がる共感
[ 「新聞紙面や実物資料での客観姿勢に好感が持てる」との感想が寄せられている展示 ]
「知らない」は罪 全国から来場…共生を学ぶ場に
昨年11月24日にオープンした在日韓人歴史資料館が、開館から2カ月を迎えた。22日までの来場者は2000人余りで、好調な滑り出しと言える。備え付けのアンケートには、「在日の歴史を初めて知った」という素朴な驚きや、「資料の拡充を」という忌憚のない意見が寄せられている。また、「在日と日本人がともに考える企画を準備してほしい」など、活動の広がりを求める声や日本人にとっても貴重な学習の場になるといった期待が高まっている。
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「歴史資料館」の来場者は、東京をはじめ首都圏に住む同胞が多いが、なかには日本の新聞やテレビ・ラジオで開設を聞きつけた日本人が東北や近畿圏などから上京した折に立ち寄るケースもある。また、来日した韓国人がやって来ることも珍しくない。韓国文化院や高麗博物館も情報提供に一役買っている。
世代別には20代から50代が多く、40代が突出している。性別では6対4で男性が少し多い。高校、大学の教員や学生の来場も目立つ。
展示については、「数はまだ少ないものの、時代別によく整理され、見やすい」「報道された新聞記事や実物資料を展示する客観姿勢に好感がもてる」と概ね好評だ。韓国からの留学生は「田舎のハルモニが使っていた生活道具と同じ物を在日が使っていたことに驚き、懐かしかった」と感想を述べた。60代の日本女性は「解放後、祖国に戻りながらもそこでは住むことができず、密航でやって来ざるを得なかった人の行李に複雑な思いがする」と書き綴った。
全般的に好意的な反応が多いが、韓国語や英語の説明文、音声ガイドによる案内、関連映像の常時上映や、「地方でもホームページ上で展示物が見られるようにしてほしい」といった運営上の要望も届いている。
印象に残った展示で最も多いのは、「指紋押捺制度の変遷」で、「子どもの頃、ニュースで見た。当時から(指紋反対運動の)背景を知りたいと思っていた」(30代女性)「一人の勇気ある反対行動が、多くの人に広がっていった」(50代女性)など、80年代の在日の闘いが共感とともに心を引き付けているようだ。
「関東大震災」や在日を治安対象とみなした「防犯ポスター」は「民族差別の最たるもの」という40代の男性は、「強制連行はないという人に、資料館を見てほしい」と書き残した。映画「血と骨」を見て、在日の戦中・戦後の生活を知りたかったという大学院生は、「GHQに弾圧された民族教育を自分たちで闘い、守るしかなかった歴史的事実は悲しい」と書いた上で、「さらに展示資料を増やせばもっとすばらしくなる」と期待を込めている。
来場者は展示物を通して「在日を正しく理解してほしいという思いが伝わってくる」(30代男性)、「教科書には在日についての記述がない。知らないことは罪。知ることで理解が始まり、深まる」(60代女性)などと受け止めている。
その上で、在日と日本人がともに考える視点から「韓・日・在日の歴史を3者が考え、話し合うセミナー」や「個別の歴史事実をそれぞれ深く掘り下げる企画」「肉声で語る在日の各界各層の講演」などの企画展を希望している。
単に存在する「静の資料館」から次の展開を求める「動の資料館」へとニーズが広がってきているようだ。
(2006.1.25 民団新聞)