キムチネット協議会(金永悦会長)が発足してから半年余り。手作りのキムチを販売する同胞業者のPRに努める一方、韓国の農協を通じて共同仕入れの可能性を探るなど、キムチネットに対する期待は高まりつつある。金永悦、朴喜雄(焼肉店「ぼくり」代表)、趙仁秀(民団愛知県本部副団長)の3氏に生活者団体である民団のチャンサネットのあり方について語ってもらった。(司会=林三鎬・民団中央本部企画調整室長)
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キムチこそ焼肉店の命 朴
地域の業者を結ぶ手段 趙
他業者も参加させたい 金
司会 まず、キムチネットのホームページの反響などについて聞きたい。
金永悦 キムチネットの名称で始まったが、キムチ業者だけに限るのではなく、焼肉業者や一般の商品業者、ひいては居酒屋まで網羅したマーケットを作ったほうがいいと思う。まだ発足したばかりでPR不足もあり、なかなか広がらないでいるのが現状だ。ホームページの内容をもっと工夫すべきではないか。
趙仁秀 キムチネットの発足は民団中央の音頭で進められてきたが、愛知の場合は、団員の主要な業者のネットワーク作りをするにはどうするかということから始まった。一番手をつけやすいキムチとITを結びつけたチャンサネットの話が起こった。その準備段階として昨年の夏、愛知県内の同胞業者、つまりキムチや韓国食材店、焼肉店、居酒屋、喫茶店など108軒を取材した。これらの店をPRしようとホームページを立ち上げたものの、申し込む店が少ない。
司会 それはなぜか。
趙 同胞業者の場合、こじんまりとした零細業者が大半で、キムチネットがどういうものなのかということすら見えてないのが実情だ。なかには楽天ネットを使いキムチ販売をしている団員もいるが、多くは入り口のところで立ち止まったままだ。共同仕入れなど多くの業者が興味を持っているが、ネットそのものがなにか見えていない。中央のキムチネットも同様に誕生したばかりで、どこに歩いていくのか方向性が定まらないでいる段階ではないか。
朴喜雄 ネットの活用方法はいろいろあるだろうが、キムチは焼肉業者にとって店の生命といえる。そこに店のすべての味が含まれてるといっても過言ではない。キムチにこそ店主の気持ちが入っている(笑い)。どのようなキムチを作るかが勝負であることを考えれば、キムチネットの重要性は言うまでもなく、やはりネットの位置づけをきちんとすることが大切だ。
司会 例えば?
朴 キムチ業者の紹介だけでなく、韓国食文化のメッセージを発信していくという大きな位置づけが不可欠だ。専門料理家を招いて講習会などを開いてもいいだろう。以前、鄭大聲先生が「料理というのは距離と時間が変えていく」と語っていたが、その通りだと思う。食の伝導者としてネットに文化的視点を持たなければならない。
共同仕入れ
産地交流で実現可能に 金
民団の存在価値を痛感 朴
会員拡大のチャンスだ 趙
司会 昨年11月、光州キムチ大祝祭にあわせて農水産物流通公社や忠清道の安眠島農協、論山コチュジャン工場などを訪れる参観団を初めて実施したが、参加しての感想は。
金 今回は唐辛子などキムチ材料の産地や工場を訪れ、品質の良い食材を共同仕入れできる可能性を見いだした点で意義が大きい。また、キムチネット会員のほかに、焼肉店経営者らで構成された「コリア友の会」も一緒に参加し、互いに交流できたのも良かった。これまで共同仕入れをするための窓口がなかったので、生産者側のキムチネットに対する期待が大きいことを実感した。
朴 韓国に食材探しに何度も足を運んでいるが、やはり民団という組織を通して交渉した場合のすごさを改めて感じた。コチュカル(唐辛子)の場合、一昨年、昨年と大変な凶作だったので中国産を主に使わざるをえなかった。中国産はただ辛くて、色もあまり良くない。品質の良いコチュカルを入手したいと思っていただけに、今回のツアーで非常に質の良いコチュカルと出会えたのは望外の喜びだった。価格が高くても高品質のものを常時入手できれば、おいしいキムチを作ることができ、我々焼肉経営者にとってすごく大きな力になる。キムチネットに対する見方も変わってくるのではないか。特にコチュカルの場合は日持ちするので共同仕入れしやすい食材だと思う。
金 参観団にキムチネット会員の参加者が少なかったのは残念だったが、同胞のキムチ業者は零細が多いので、なにか目に見えるメリットがないとなかなか時間を割くのは難しい。会員を増やすためにも、この共同仕入れはぜひ成功させなければならない。焼肉業者にとっても、良質の唐辛子を入手できれば、メニューの開発につながるし、店のPRにもなるだろう。
趙 共同仕入れについては多くの業者にとって興味があるので、会員拡大のチャンスになるはずだ。
司会 高品質でも値段が高ければ、零細業者にとって負担では。
朴 製造原価の高いコチュカルを使ってもキムチの場合は利益が出るはずだ。最近は本場のキムチを好む人が増えていることから、むしろ、韓国産のいいものを使って伝統的な味を維持することが大切で、韓国の食文化を正しく伝えていくという観点が重要だ。
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プロフィール
焼肉店「ぼくり」代表 朴喜雄氏 パク・ヒウン 1943年山梨市生まれ。青山学院大商学科中退。山梨県内に焼肉店「ぼくり」5店を経営。韓国の「医食同源」を追求。民団山梨県本部団長。
民団愛知県本部副団長 趙仁秀氏 チョ・インス 1960年名古屋市生まれ。大同高校卒。会社勤めを経て現在は民団愛知県本部副団長。愛知独自のチャンサネット(
www.jansanet.com/)を立ち上げた。
キムチネット協議会会長 金永悦氏 キム・ヨンヨル 1953年忠清北道永同生まれ。拓殖大卒。商学博士。元在日本韓国留学生連合会会長。現在はオフィス東京、キムチネット協議会代表。
(2006.2.1 民団新聞)