掲載日 : [2002-12-11] 照会数 : 3463
趙章恩のおもしろ韓国IT事情 <2> 「サイバー団地」
[ ウェブパッドを手にする子ども(三星サイバービレッジで) ]
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趙章恩のおもしろ韓国IT事情
<2> 「サイバー団地」
■家庭が〞先進基地〟に…ネット利用はあたりまえ
韓国では法律で新築の全ての建物にブロードバンド回線設置が義務付けられている。分譲広告に必ず登場する「情報通信1等級」というコピーは、「Cyber Korea21」戦略の一つとして99年4月より実施されている「超高速情報通信建物認証制度」で認められたという意味。
この制度がきっかけとなり、サイバーアパートというネーミングが登場した。99年頃は、韓国でもサイバーアパートはインターネットが使えるアパートぐらいの存在であったが、2000年一気に沸き起こったITブームと共に、団地内LANを利用した全てをネットワークで解決してしまうアパートを「サイバーアパート」と呼ぶことになった。
ご存知の通り、韓国ではマンションをアパートと呼び、そのほとんどが団地となっていて団地計画の中に商店街や学校、病院等が含まれ一つの都市計画になっいる。
韓国全人口の4分の1がソウルに住み、そのまた半分がアパートに住んでいる。このようなブロードバンド化しやすい住居条件というのも世界で類を見ない。
三星物産住宅部門が建設したソウル市郊外の団地、「サイバービレッジ」では世帯ごとに1台ずつ「トックスニ」と呼ばれる無線ウェブパッドを配り、これ一つですべての家電を操作出来、インターネットも利用出来るようにした。持ち歩けるTVのような形でタッチパネルなので、パソコンの電源の入れ方すら知らなかった主婦やお年寄りに大人気だ。
自分が住んでいる団地のホームページにさえ入れば、管理費内訳を照会し、オンラインバンキングでの支払いや、近所のスーパーやデパートへのオンラインショッピングも可能だ。
食料品は午前中ネットで注文すると午後には家まで配達してくれる。団地の住民しか接続できないホームページなので、掲示板には「子ども服買います、売ります」のやり取りをはじめ、管理室からのお知らせ、不親切だったお店への苦情等、団地内の情報が何でも書いてある。
顔と顔を向かい合って近所付き合いしなくてもネットワークでつながっているため、気軽にコミュニケーション出来るのが嬉しい。外部からでも接続すれば団地中の出来事をすぐ把握できるようにしてある。
サイバーアパートは昨年から「インテリジェントアパート」に変身しつつある。
現代建設が直分譲する高級サイバーアパートは、指紋認識のオートロックドアをはじめ、音声認識でエアコンや照明、インターネットにつながるのはもちろん、ホームネットワークとして家電同士がつながり、極楽な生活を目指している。
指紋認識ドアの場合、非常用指紋を登録して防犯効果を狙う。通常は右手の人差し指で開け、非常時は親指をあてるとドアが開きながら同時に警備員がとんでくることになっている。家に入った瞬間「エアコン!」と言えば外の温度に合わせエアコンが作動する。
家電は冷蔵庫がサーバーの役割をし、DVDプレーヤーの中身をキッチンにいながら冷蔵庫のモニターで見れたり、韓国主婦の必需品「キムチ冷蔵庫」は外の温度に合わせ自らおいしくキムチを熟成させていく。
企業と政府は家庭をIT産業の基地と捉えている。サイバーアパートのお陰で主婦のオンラインショッピングやバンキング、コンテンツ利用が急激に増え、ネットビジネスのVIPとして重宝されるまで至った。まずはネットで何かをやるのがごく普通の日常生活となっている韓国。今まで以上にどんな形でIT強国になっていくのか楽しみだ。
(JIBC会長・IT評論家)
(2002.12.11 民団新聞)