掲載日 : [2006-02-15] 照会数 : 7452
原油高 京友禅を直撃 閉鎖続く同胞企業
[ 京友禅の多様な色を保ってきた同胞蒸し工場 ]
蒸し工程 伝統維持に限界も
【京都】京都を代表する伝統工芸「京友禅」を下支えしてきた在日同胞の蒸し工場が、折からの原油高で相次いで閉鎖に追い込まれている。それぞれの蒸し工場には独自の技術がある。業界がこのまま先細りしていけば、友禅の美しく多様な色が失われることは避けられないだけに、関係者は頭を抱えている。
京友禅にかかわる業者で組織する京都友禅蒸水洗協同組合に加入している組合員は現在18社。非組合員を加えても20社足らずに過ぎない。このうち全体の9割が在日同胞の経営だ。ピーク時は100社を数え、1250万反を染めていた。
ところが、オイルショックを経てここ数年は原油価格が高止まりし、廃業や転業が相次いでいる。受注の減少、染め価格が下がったことも台所を直撃した。
都内にある民間の石油情報センターによれば、原油価格は昨年から値上がりを続け、2年前の同時期に比べると約2倍に跳ね上がった。これは人件費1人分に相当するという。同胞企業は従業員数人の零細が大多数だけに打撃も大きい。04年には全体の染め量が75万反にまで激減した。
先代1世が55年前に興した工場を継ぎ、地場産業として育ててきた金永哲さん=民団中京支部議長=はピーク時を懐かしそうに語った。「在日同胞ばかりだったので政治色関係なくよく集まり、運動会や野遊会などをやった。これからは工場を維持できないところがさらに増えてくるだろう」と顔を曇らせた。
業界大手で京都友禅蒸水洗協同組合の理事長も務める金政器さん(55)は昨年11月、燃料を原油から天然ガスボイラーに替えた。設備投資に2000万円ほどかかったものの、月間3〜400万円かかっていた燃料代を200万円ほどに抑えることができたという。
しかし、零細が多い同胞蒸し工場にとって多額な設備投資ができるのは少数だ。協同組合事務局のある関係者は「企業経営が困難なことを行政に訴えていくためにも、組合員の声が大きいことが大切なのです。京都の伝統工芸、地場産業は組合員が2ケタあって辛うじて守られているのです」と話す。金永哲さんは「これからは協力工場システムに替えていくしかない。1社がリーダー役を担い、受注したら傘下の企業に仕事を分散していく。利益は分散するが、組合が生き残るにはこれしかない。京都の地場産業をなくさないよう国や行政による法的な保護も求められる」という。
蒸し工場はお互い技術を競い合いながら伝統産業を支えてきたが、これからは相互扶助も欠かせないようだ。
3K産業の典型
蒸し加工は京友禅を色鮮やかに仕上げる最終工程だ。ボイラーで蒸気を出しながら染料を発色、定着させ、最後に製作工程で使った染料や糊を洗い流すまでを担う。70年代後半までは鴨川や桂川で水洗いをしてきた。これが有名な友禅流しだ。その後、環境汚染が問題になって工場に水洗機械を備えるようになった。「汚い」「臭い」「きつい」と三拍子そろった典型的な3K産業でもある。解放前から在日同胞が業界の大部分を占め、支えてきた。
(2006.2.15 民団新聞)