【今後の課題】
メリットある便宜提供 趙
「在日食文化」の継承を 金
大きな視点で進めたい 朴
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司会 前回、唐辛子の共同仕入れの成功がキムチネット成否のカギになると指摘されたが、結局、それは生活者団体である民団の財政基盤確保や力量アップに重要な役割を果たすと思う。今後の課題について聞きたい。
趙仁秀 愛知県で目指しているのは、県単位でもできる共同仕入れ。キムチ業者にとどまらず焼肉業をはじめさまざまな業種を網羅した形での共同仕入れを考えたい。例えばビールとか箸など、少量でも何かメリットのあるものにトライしたい。末端にまで浸透させていくにはそういう取り組み、姿勢が不可欠だ。全国的に広げていくには、東京だけでなく、まずは名古屋や大阪、福岡など大都市圏で年に1、2度イベントを企画してはどうか。
金永悦 共同仕入れの食材としてまず唐辛子から手がけることになったが、必要と思うものをどんどん仕入れることに賛成だ。安眠島農協の唐辛子をブランド品に育てながら、会員のキムチも従来よりプラスアルファの味にするにはどうすべきか、皆で協力して知恵を出しあう、そういう会にしたい。
朴喜雄 近年の韓流の動きもあり、キムチネットを立ち上げたタイミングはとてもよかったと思う。民団愛知のようにチャンサネットに一生懸命取り組んでいたり、ニューカマーのアジュンマ(おばさん)たちが民団に協力するところもある。要は、コチュカルなどを安心して買うことができる窓口が必要な時期にきたということだ。
司会 民団は生活者団体という旗印をより鮮明にしていくべきではないか。
趙 その通りだ。一番重要なのは財政問題。愛知のチャンサネットも将来的には有料化を検討すべきで、それに見合った便宜を提供しなければならない。日本で、中華料理がそうであるように韓国料理もメジャーになりつつある。これからの世代を民団に関心を向けさせるためにも、なにかメリットのあるものを提供していきたい。そういう期待は大きいと思う。
金 民団に対する期待感は、とりわけ零細業者にとって大きいだろう。チャンサネットの成功は組織強化、財政強化にもつながるはずだ。民団全体で本気になって取り組まなければならない。
朴 焼肉がこれほどの広がりを見せ、文化として認知されている。やりかたによっては、民団の役割は数知れない。チマチマやるのではなく、もっと大きな視点から推進していくべきではないか。
趙 日本国籍取得者が増えている中で、民団を知らない世代も多い。ここで実生活に直結したチャンサネット体制の確立が急がれる。さまざまな形でPR活動をしっかりすべきだ。
司会 現在、NHK地上波放送で韓国ドラマ「チャングムの誓い」(原題「大長今」)を放送中で、韓国食文化に対する関心が高い。このブームを生かす方法はないか。
朴 このドラマがなぜ人気があるのか。韓国食文化の豊かさ、すばらしさに驚いている日本人が多いからだ。
金 韓国の伝統料理を見て日本人の意識が変わったといっても過言ではない。大長今のメッセージが日本全国に伝わっており、これが在日の地位向上に寄与している。このブームを民団のイメージアップに活用すべきだ。
趙 お金のかからない方法を検討したい。「大長今」の主人公、イ・ヨンエにキムチネットの名誉会員になってもらえないだろうか。今年は特に民団60周年ということもあり、日本全国にアピールできる方法を考えたい。昨年の愛知万博で体験したが、カネと結びついたものではなく、ハートフルにやれる企画が心に残る。
朴 1988年のソウル五輪以来、日本の家庭でキムチが受け入れられている。最近、小学生に「キムチはどこの国のものか」と尋ねたら、8割以上が「日本だ」と答えたという。うちの店でもテーブルごとにコチュジャンをおいているが、毎日補充するほどに好まれている。在日同胞が継承してきた食文化なのに、このまま放っておけば、なんでもかんでも、韓国の食文化だと一言で片付けられるかも知れない。なんとか在日文化として継承していきたい。これもチャンサネットの役割のひとつだと思う。
金 必要性を感じて、皆が求めてきたのではなく、必要性を確信した上で我々がリーダーシップをとる。それが民団の役目であり、そこまで目的意識を持って取り組まなければならない。チャンサネットを成功させるには同胞組織によるバックアップが重要だと思う。
司会 貴重な意見をありがとうございました。今後、民団に新風が吹くようにがんばりましょう。
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【出席者】
金永悦氏(キムチネット協議会会長)
朴喜雄氏(焼肉店「ぼくり」代表)
趙仁秀氏(民団愛知県本部副団長)
司会=林三鎬・民団中央本部企画調整室長
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キムチネット関連アドレス
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http://kimchi.jangsa.org
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http://www.jangsanet.com/ (民団愛知県本部)
(2006.2.15 民団新聞)