掲載日 : [2006-02-22] 照会数 : 7226
差別禁止法を勧告 実態調査し認定を
国連の代表
日本調査結果 人権委資料に
日本国内における人種差別、外国人排斥の現状について調査した国連の特別報告者、ドゥドゥ・ディエン氏による日本政府への勧告内容が、このほど明らかとなった。勧告の中でディエン氏は、日本国内での人種差別と外国人排斥の存在を認定したうえで、政府に差別禁止法を制定するよう求めている。報告書は3月から始まる国連人権委員会の付属資料となる。
ディエン氏の報告書は英文で23ページ。①一般的背景②公的機関の政治的・法的戦略③関係する集団による自らの状況の提示④特別報告者による分析と評価⑤勧告−の5章立て。
勧告に先立ってディエン氏はまず、「日本の被差別集団それぞれの実態調査を実施すること」を日本政府に求めている。ここには国際機関から外国人、および民族的少数者の人権に関する数多くの「懸念及び勧告」がなされているにもかかわらず、遅々として改善が進んでいないことへのいらだちさえうかがえる。
まず、人種差別および外国人差別が厳に存在することを正式かつ公的に認め、国内法の整備に取り組むよう求めた。その前提として、日本の被差別集団に対する実態調査が必要とした。具体的な改善事項には、外国籍の無年金高齢者への救済も盛り込まれている。
歴史教科書では在日韓国人や中国人、アイヌ民族、沖縄住民についての記述が減少傾向にあることに懸念を示した。植民地時代と戦時中に日本が近隣諸国に行ってきた負の側面と併せ、これら集団が受けてきたいわれなき差別もしっかり教科書に反映されるべきだと求めている。
この報告は日本社会で最近顕著となっている差別・排外主義的動向を的確に指摘し、多民族・多文化の共生する社会の構築を促した初の包括的な国連文書といえる。
ディエン氏は昨年7月3日から11日まで日本を公式訪問。日本における人種差別・外国人差別の現状をつぶさに調査し、これまでとられてきた改善策について外務副大臣や各省庁の代表者、裁判官、ならびに大阪、京都、東京、札幌の地方自治体の代表者から聞き取り作業を行った。
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歴史認識にも言及 報告要旨
特別報告者は、日本には人種差別と外国人嫌悪が存在し、それが3種類の被差別集団に影響を及ぼしているとの結論に達した。その被差別集団とは部落の人びと、アイヌ民族および沖縄の人びとのようなナショナル・マイノリティー、朝鮮半島出身者・中国人を含む旧日本植民地出身者およびその子孫、ならびにその他のアジア諸国および世界各地からやってきた外国人・移住者である。
このような差別は第一に、社会的・経済的性質を帯びて表れる。すべての調査はマイノリティーが教育、雇用、健康、居住等へのアクセスにおいて周辺化された状況で生きていることを示している。第二に、差別は政治的な性質を有している。ナショナル・マイノリティーは国の機関で不可視の状態に置かれている。
最後に、文化的・歴史的性質を有する顕著な差別があり、それは主にナショナル・マイノリティーならびに旧日本植民地出身者とその子孫に影響を与えている。このことは主に、これらの集団の歴史に関する認識と伝達が乏しいこと、およびこれらの集団に対して存在する差別的なイメージが固定化していることに現れている。
公的機関がとってきた政策および措置については、特別報告者は、一部のマイノリティーのいくつかの権利を促進する法律がいくつも採択されたことを歓迎する。しかし同時に人種差別を禁止し、かつ被害者に司法的救済を提供する国内法がないことに、懸念とともに留意するものである。
最後に、特別報告者は、以下の事項を含むいくつかの勧告を行う。
▼日本における人種差別の存在を認め、かつそれと闘う政治的意志を表明すること。
▼差別を禁止する国内法令を制定すること。
▼人種、皮膚の色、ジェンダー、世系、国籍、民族的出身、障害、年齢、宗教および性的指向など、現代的差別における最も重要な分野を集約した平等および人権のための国家委員会を設置すること。
▼歴史の記述の見直しおよび歴史教育のプロセスに焦点を当てること。(原文英語、仮訳は反差別国際運動日本委員会)
(2006.2.22 民団新聞)