掲載日 : [2006-02-22] 照会数 : 8978
【愛知韓学特集】飛躍へ校舎増築・講座拡充
[ 飛躍への構想を話す張永植理事長
] [ (上)先生とオリニの熱がこもる授業光景、
(下)「文化祭で披露したい」と練習に励むオリニたち ]
民族心と祖国愛を柱に
オリニらに希望と夢託す
学校法人愛知韓国学園名古屋韓国学校(張永植理事長、尹大辰校長)では、生徒数の増加にともない、校舎増設の計画が進められている。
昨今の韓流ブームで、地域でもたくさんの韓国語教室があるが、張理事長は「1世の民族心と祖国愛といった重みが、この愛知韓国学園にはある」という。
1962年の開校以来、名古屋での民族教育を一手に担い、今まで7229人の修了生を送り出した。同校の役割に対する地域の評価は高く、小学生から一般まで現在539人余りの児童・生徒たちが、韓国語や文化、韓国料理、書画、歌や伝統舞踊など月曜から土曜まで週1回、あるいは2回の授業を受けている。
特に、土曜日に開校している児童を対象とした「児童班」を「初等部」に改編。幼少期からの民族教育に積極的に力を入れており、校舎増設は年々増えている生徒たちに、「よりよい環境を提供したい」という張理事長の思いが実現した。在日1世たちの熱い思いを、しっかりと3世、4世へ伝えていくためにも、「民族教育の第一歩は、韓国語である」と話す張理事長のもと役員一同若返りを図り、その積極的な民族教育への取り組みに、各分校も関心をもつようになった。
今回の校舎増設は、次世代を担うオリニたちが、よりよい環境のもとで教育を受けることを願い、オリニたちに未来に向かっての希望と夢を与える教育の場にしたいという考えから。新校舎完成は秋頃をめざしている。
張理事長は「正しい判断を自分のパワーにつなげ、実像を見据える目と能力を養って欲しい」と熱く語った。
授業は、従来の内容にレベルアップしたカリキュラムを加え、新講座の実現に向けたいとしている。
生徒募集は、正規班の各6カ月コースで、4月と10月に行っている。また、特設班の語学講座は1年コースのため、10月の新入生募集はせず、但し、初歩的な学習を終えた人は、随時入校可能。
受付は平日10時〜17時、土曜日は10時〜12時、同校まで。
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開校から44年…7229人が巣立った
新校舎に託児所も
実用韓国語や「教養」重視
《新校舎の計画》
現在、本校舎横にある遊具場に新校舎を増設する。建坪116・64㎡。1階が129・6㎡、2階が116・64㎡となっており、1階は「臨時託児所」として、オリニたちを送りにきた学父母やその兄弟たちが、授業が終わるまで利用できる。
《新講座の内容》
◎「介護用韓国語講座」(月曜、木曜)
在日同胞社会においても高齢化が進んでいる中、在日1世の介護をどう支えていくのかが問われている。加齢とともに「認知症」が発症すると、日本語を忘れて母国語で話すようになり、ほとんどが日本語と母国語とのミックス会話になることが多く、介護者がその言葉を理解できないことから、同講座の必要性が出てくる。
◎「初めての韓国語」(水曜)、「伸ばそう韓国語」(金曜)
「韓国語の最短履修コースは、韓国学校です」をキャッチフレーズに、韓国語の発展プロセスを充実したカリキュラムで教えることで、生徒たちをひとりでも多く本校に吸収したい。
◎「研究1」、「研究2」(土曜初等部)
本来土曜初等部は、基礎、初級、中級、高級1、高級2で開校しているが、高級2は主として本校で6年履修した中学1年を対象としている。昨年の韓国語能力検定試験1級に3人が挑戦し、全員が合格したことを踏まえ、高級1、高級2を従来の高級にもどし、研究1(中学1年対象)、研究2(中学2〜3年対象)を新設することで、能力検定試験にひとりでも多く挑戦させる機会とし、初等部の発展につなげたい。
◎「能力検定対策」(3級〜6級、火曜〜金曜)
大学、短期大学の第2外国語に韓国語の履修者が増えていることを踏まえ、検定対策として、3級から6級までの4つの講座を新設したい。
◎「教養講座」の発展(土曜)
初等部児童に付き添う学父母を対象に、現在「教養講座」を実施しているが、帰宅後、児童の学習に対処できない学父母に、従来の同講座を「会話セミナー」、「研究セミナー」に置き換えて、児童と学父母がともに学習できるシステム造りを図りたい。
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韓国語めきめき体得…伝統舞踊や歌にも力
初等部の授業風景
「パジ」、「チョゴリ」‐元気良く大きな声で、黒板に書かれた韓国語を読み上げるオリニたち。ここは毎週土曜日、朝9時半から午後0時40分まで、小学1年生から6年生までを対象に、韓国語の授業が行われている。「初めの頃、子どもたちのノートを見たときは、ウリマルの字が弱々しい書き方だったのが、今では、力強い文字になってきている」と先生が感嘆するほど、子どもたちの吸収する力は、目を見張るものがある。
授業参観に来ていたオモニたちも「子どもが自信をもって書けるようになったと喜んでいた」、「家でも子どもから単語を教えてもらうほど、積極的になっている」と話していた。
開校記念文化祭
開校日の11月3日は、「開校記念日」としてオリニたちの日ごろの成果を発表する文化祭が、毎年、愛知韓国人会館で開催される。
歌や民族舞踊、プンムルなど「この日だけは誰にも負けないくらい、子どもたちの意気込みが伝わってきます」と尹校長。オリニたちの晴れの舞台に応援に駆けつけた父母たちは、わが子の成長ぶりに喜びもひとしおだ。また、会館1階広場では、婦人会愛知県本部や各支部の婦人会オモニたちが協力しあって、トックやキムチ、チヂミなどを販売するのも恒例の行事となっている。
「言葉を通じて、自分のルーツを知ることは民族教育の基本であり、特に幼少期からの教育がとても大事」と張理事長。オリニたちの吸収しようとする力は無限で、普段の遊びや生活の中から、自然な形で学んでいってほしいという。
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鄭煥麒名誉理事長談話
民族教育の真の目的は尊敬される国際人育成
1962年に民団中村支部の2階で始めたウリマル教室に、入りきれないほどのオリニたちが訪れ、またオリニたちが学んだ歌や踊りが、民団の親睦会などで披露された。その姿を見て、早く民族教育の学び舎を設立しなければと痛感した。
1965年に愛知韓国学園が設立された時は、感無量で胸が熱くなった。愛知韓国学園は、韓日相互理解と韓日の文化を正しく学び、在日子弟が日本社会から尊敬される国際人となるよう育成することを主眼としている。
急速にグローバル化している現在、在日同胞が言葉や習慣を身につけることは、国際人となるための入り口だ。民族教育とは、祖国の伝統や文化を次の世代に伝えていくことであり、幼児期の頃から、自然体で覚えていくことが何よりも大切である。
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在日1世らの熱意…開校へ結集した浄財
地域同胞に感動呼ぶ
愛知での民族教育は、1959年当時、民団中村支部で開かれていたウリマル教室だけにとどまっていた。民族教育の場の必要性が叫ばれ、62年9月、韓国政府から派遣教師が赴任。民族教育のための生徒募集を本格的に開始した。
同年10月、同支部の講堂で授業がスタートし、ウリマルの授業を軸に文化や歴史、民族舞踊などを教え、生徒数も年々増加していった。民団の式典で踊りや歌を披露するまでになった子どもたちのすばらしい成果は、地域の同胞たちの目に、熱い感動を与えた。
「早く学び舎を建設しなければ」と、学園建設委員会をたちあげ、団員宅を地道に訪問しては募金活動を続けた。さまざまな辛酸をなめ、教育を受けることができなかった在日1世たちの、民族教育は大切であるという熱い思いが実り、65年10月、待ちに待った新校舎が完工した。
生徒数は400人にのぼり、授業内容も修業2年とした普通科と料理教室など幅広いカリキュラムで、生徒の対象も中・高校生や一般社会人に広げるまでになっていた。 75年1月、学校法人の認可を得た。開校以来、今年で44年目を迎える。
(2006.2.22 民団新聞)