掲載日 : [2006-04-05] 照会数 : 9405
全廃の「指紋」復活 入管法改定案衆院で可決
定住外国人も視野
日本に入国する外交官と特別永住者を除く16歳以上の外国人すべてに指紋と顔画像を登録させる「出入国管理及び難民認定法」改定案が3月30日、衆議院本会議で可決された。成立すれば、民団などの粘り強い闘いによって00年4月に全廃が実現した指紋押捺制度が復活することになる。こうした管理強化は外国人一般への差別をさらに助長するものと心配されている。
後退する「共生社会」
今回の改定案は「テロの未然防止」や「上陸審査及び退去強制手続きの一層の円滑化」が目的。
日本に上陸すると、入国審査窓口で指紋と顔写真などのバイオメトリクスデータ(生体情報)を取られる。これらの個人情報はデータベース化され、「捜査照会対象」とされる。なにかあれば名前、顔写真、指紋から該当データが検索され、テロなどの犯罪捜査の対象となる。16歳未満と外交官、特別永住者を除いても対象者は年間400〜500万人と推定されている。
今回の改定法案には記されていないが、定住外国人や日本人の「希望者」を対象に「自動化ゲート」と呼ばれる新たな「指紋採取制度」が創設される。これは入官窓口であらかじめ指紋登録をしておけば、鉄道の自動改札機のような機械式ゲートを高速道路のETCのようにスピーディーに通過できるというもの。
民主党の保坂展人衆議院議員は「義務ではないが、定住外国人も日本人も自動化ゲートを突破口として指紋登録を始める。政府は究極の個人情報をどのように扱うのか。初めは『希望者』とソフトにスタートするが、今後、なんらかの事件を契機に指紋押捺を国民の義務として課していく確率が高いのでは」と警戒している。
「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会」は可決を前にした3月23日、「日本は21世紀の課題として『観光立国』『経済の自由化』を標榜する一方で、それを制御する『いやがらせ政策』をとろうとしているとしか考えられない」とする「緊急反対声明」を発表している。
外登法の指紋押捺制度が全廃されたのは00年4月のこと。80年代の在日外国人らの粘り強い闘いが実ったものだ。「テロ対策」を理由に定住外国人、日本人まで監視・管理の網をかぶせようとする今回の改定案が施行されれば、「共生社会」を築いていくうえで大きなマイナスとなりそうだ。
(2006.4.5 民団新聞)