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 ハンセン病から回復した元患者が暮らす東京都東村山市の国立療養所多磨全生園を訪ねた。民団による恒例の歳末慰問を取材するためだった。

 民団関係者と元患者団体の懇談は和やかに進んだ。この光景は持参のカメラに記録した。いざ帰ろうとしたところ、互助会出席者の1人から呼び止められ、自分の顔だけは(新聞に)出さないでくれとの申し入れを受けた。

 元ハンセン病患者たちは昨年、国家賠償訴訟で勝訴した。国も控訴を断念し、「補償法」が成立した。国会も過去の隔離政策に対し「謝罪の意」を表明している。不十分ではあっても、元患者らの名誉回復が図られたはずだった。にもかかわらず、いまだにハンセン病の影を引きずっているという現実にがく然とした。

 本人はいいとしても、肉親にだけは肩身の狭い思いをさせたくないとの気持ちの表れなのだろう。この元患者からは、遠慮がちであったが、紙面を通じて不特定多数に顔を知られるのは困るという強い意思が感じられた。

 全国の療養所には240人余りの同胞が入所している。そのほとんどは70歳を超える。「補償法」は福祉の増進のために必要な措置を講じるとしているものの、在日同胞は二重の偏見と差別を背負っている。社会復帰は日本人以上に困難だ。「あと20年早く解決していたら」と力なくつぶやいた入所者の声を今も忘れられないでいる。(K)

(2002.12.25 民団新聞)

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