掲載日 : [2006-05-10] 照会数 : 7922
「孝道賞」入選作品紹介
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小学生部門賞
ぼくの宝物…子思う親の姿写真に
徐齊(11)東京都
最近一枚の写真を見つけました。今年の夏に亡くなったハラボジの遺品の中から出てきた写真です。ぼくの尊敬するハラボジが撮ってくれた大事な写真が見つかったのです。小さい頃、ぼくは病気がちで、ご飯を全然食べなかったそうです。
今でもぼくがご飯をたくさん食べると、アッパは嬉しそうな顔をしてニコニコしていますが、ちょっとでも食べる量が減るとすごく怒ります。アッパに叱られるたび(アッパはぼくのこと嫌いなのかな)と思っていました。
写真の中のぼくはひょろひょろで本当に小さな赤ちゃんです。そんなぼくをアッパはしっかりと片腕で抱きかかえて、真っ赤な顔をして一生懸命食べさせているのです。正直言って少し驚きました。赤ちゃんを育てるのが、こんなに大変なことだとは思ってもみませんでした。
写真に写ったアッパの顔を見ていると、だんだん感謝の気持ちが芽生えてきました。
そして気がついたのです。アッパは、ぼくがご飯を食べないのを見て怒っているのではなくて、心配していたのだということを。
ぼくはアッパとオンマの子に生まれてきて本当によかったなと思いました。
ハラボジはもうこの世にいないけれど、写真を通してぼくに大切なことを教えてくれました。アッパがぼくを大切にしてくれているのだという思いをこめて、写真を撮ってくれたのかと思うと、大好きだったハラボジの優しい気持ちが伝わってくるようで心が温かくなりました。
この一枚の写真は、今ではぼくの大切な宝物です。ぼくはハラボジやアッパに恥ずかしくない立派な大人になって親孝行しようと決めました。
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小学生部門賞
出会いそしてコーヒー一杯…天国のおばあさんに届け
金東煥(12)大阪市
年末になるとクリスマス・キャロルと共に1年を終え、人々の歩みがせわしなくなります。この頃になると、お母さんの表情は暗くなりますが、なぜ、そんな暗くなるのでしょうか?
この頃になると、お母さんは生まれて百日になったばかりの私を抱いて、新しく引っ越した家で出会ったおばあさんがしてくれたことが思い出されると言いました。
私を抱いてくれたり、おんぶしてくれたり、ポケットの中のあめを出して手に握らせてくれたりしたことを聞いて、私はそのおばあさんに会いたくなりました。
言葉をつまらせるお母さんの声に何かあるという気がして、お母さんに話してくれるように、うながしました。
「あんなに健康で、年を取っても私に、小さく黒い顔でにこにこしながらコーヒー一杯をお願いしたのよ」
生活するのに忙しい娘たちも、たびたび来ることができないし、息子夫婦は母親をただ単純にぼけていると言いながら、部屋の中に閉じこめてしまって、悪いことをしたと考えたら胸が痛かったそうです。
監禁状態でおばあさんは出たくても外出できなかったし、温かいコーヒー一杯を飲みたくても、そんな自由さえもなかったのではないでしょうか。
お母さんは血はつながっていませんが、点滴でもしてあげれば良かったと後悔しています。温かいストーブの上のわいているお湯を入れるおばあさんの代わりに、お母さんにコーヒーを出しました。
苦いか甘いか、びみょうなコーヒーの味はまだ分からないけれども、私の小さな愛でもお母さんを通して天にいらっしゃるおばあさんに伝えたくて…。
(2006.5.10 民団新聞)