掲載日 : [2006-05-10] 照会数 : 8089
細やかな対応で県本部支える女性事務局長
現在、全国の民団地方本部で女性が事務局長を勤めるのは宮城、長野、石川、島根、沖縄の5人。女性ならではの団員への細やかな対応や、アイデアに富んだ企画で地域住民たちとも友好を深めているのが共通点だ。「改革を通じて民団をさらに良くしたい」という思いは強い。
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常に丁寧な対応で
民団宮城 姜恵美子さん
「1人の団員として、相手の気持ちを考えながら対応していくことを心がけている。女性ならではの気配りを忘れず、丁寧な対応と明るい雰囲気で団員を迎え、民団にまた来てみたいと思われるような雰囲気作りに皆で努めている」
今年3月に事務局長に就いたばかりだが、事務員を10年ほど勤めてきただけに気負いはない。「団員に対して、どんなサービスができるかを常に考えている。丁寧な対応が必ず次につながる」と強調する。記念行事ごとに懇親会を設けながら、団員との交流を大切にしているという。
一方、地域社会における交流では、立ち上げて2年目に入った民団文化センターで韓国語を勉強する日本人が150人を超す。日本の小学校や地域住民からは、青年会農楽隊の派遣、料理教室や通訳、チマ・チョゴリや扇子、民族楽器のレンタルなどの依頼が増え続けている。
また約70着のチマ・チョゴリのレンタルをきっかけに、宮城県広瀬高校吹奏部が民団新年会で韓国の曲を演奏してもらうまでになったのも地道な活動の成果だ。
「多文化共生のなかで民団が在日同胞全体の求心体としての役割を果たすべきだと思う。改革を通じて地方や過疎地域の現状をさらに把握し、果敢に対応してほしい」と期待感を寄せる。
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人材を上手に活用
民団長野 金美恵子さん
「〞女だから〟と言われたくない。力仕事でもなんでもやる」。負けず嫌いの性格だが、団員にはやさしく、歴代の団長から全幅の信頼を得てきた。
事務局長に就任して5年目。04年に設立されたNPO法人「民団長野国際協力センター」の実務も担っている。「やることが多すぎて大変」と語る一方で、「やりがいがある」と余裕の表情。
NPO法人化は当初、長野県韓国会館と各支部民団会館の財産保全を目的としていた。しかし、いざスタートしてみると、民団会館を有効利用しての韓国語講座や韓国料理教室、講演、自治体からの通訳要請など、「国際交流の架け橋」として地域に根ざした取り組みに忙しい日が続く。
どの企画も、「まず、NPO法人の会員である在日を一番大事に考えている」。料理講座では著名な講師に依頼するのではなく、団員家庭の主婦に普段の家庭料理を指導してもらうほか、講演でも団員から講師を登用するなど、人材をうまく活用している。
モットーは「楽しくて勉強になり、ちょっとしたことでも団員さんの心に残るもの」。まず実行ありきのポジティブな姿勢で業務にあたってきた。
「よく〞民団離れ〟といわれるけど、団員のためになにか心に残ることをやっていけば必ず戻ってくる」と信じて疑わない。
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団員の心和む場に
民団石川 禹貞玉さん
「『民団に来ると心が和む』と団員から言われるときが一番うれしい」と語る。
ハラボジやハルモニの話し相手になるのも、過疎地の重要な仕事のひとつ。女性の事務局長相手だからこそ、ぐちもこぼしやすい。
事務員として3年間勤め、事務局長に就いてから3年目。石川県下の団員は約2000人。緊縮財政から職員が1人減り2人体制になったが、一時期、1人だけですべてをこなしたこともある。金沢支部の団費管理も兼任している。「事務局長になってから、ますます責任の重さを感じている」
金沢市と全州市が姉妹結縁関係にあることから「1千人ビビンパ」イベントを行ったり、尹奉吉義士記念碑を毎年顕彰するなど地域との交流は親密だ。
問題は、民団行事の参加者に若い世代が少ないこと。
「どういう方法がいいか思案中。中央本部が過疎地域や支部の活性化を改革の最重点に掲げたので期待している」という。
「民団は諸先輩の努力の積み重ねにより今日がある。本来、民族の親睦団体のはずなので、皆が楽しむことができる場、温かい雰囲気にするにはどうすべきかを考えていきたい」
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会館開放で活性化
民団島根 丘英仁さん
昨年度、「開かれた民団」をめざし一定の成果をあげた。河丙執行部が発足と同時に掲げた「改革民団」とも一脈通じる。
310世帯(05年12月末現在)の典型的な過疎県本部。民団会館は松江市内の中心に位置するが、人の出入りは必ずしも多くない。「なにかしなければ」と考え、民団の役割について広く理解を深めてもらおうと、04年10月、「韓日市民交流の集い」を開いた。
民団会館を一般の地域住民に開放したのはこれが初めて。市民多数が参加し、韓流をテーマに話が弾んだ。翌年にも料理、独島問題を考えるシンポ、韓国スタディーツアーと続き、地域で「韓日友情年」を華々しく盛り上げた。相乗効果から一般団員の出入りも活発になった。
事務局長に就任してから7年。「定刻に帰ったことはない」。常勤1人のため、なんでもやる。そのため、河執行部の「改革民団」には共鳴を覚えた。
財政的に厳しいが、「節約しながら地域でいかに多くの韓日交流を実現していくかが課題」だ。創団60周年の今年は、シンポ「我々が生きる地域社会」、嶺南大学(独島研究所)との交流、韓国のお茶文化の紹介など、引き続き韓日の架け橋としての役割に取り組んでいく。
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時間かけて話聞く
民団沖縄 金美敬さん
沖縄は団員300人の過疎地域。「地理的に遠く離れていたため、中央本部とも距離があったのではないだろうか。沖縄本部はいろいろゴタゴタがあったが、これまで苦労した分、何倍も頑張っていきたい」と抱負を語る。
新執行部が掲げた、地方本部や支部の再建に力を入れる「改革民団」には全面的に賛成だという。
沖縄には韓国領事館がないため、団員から連絡があれば、自宅に伺ってパスポートなどの代行手続きをすることもある。そういう時に、団員から直接悩みを相談されることもあり、「時間をかけて話を聞くように努めている」。
ニューカマーが増加し、日本人と結婚するケースも多く、生活習慣の違いなどで相談にのることが多いという。
女性の事務局長について、「本国でも韓明淑議員が韓国初の女性首相に就いたことから、女性でも能力があればどしどし社会活動ができる時代ではないか」と語る。
これからも女性ならではのきめ細やかな感性を生かしながら、「これまで苦労を重ねながら民団を守ってきたのは在日1世の先輩。その志を継承しながら、団員の足を再び民団に向けるように努力したい」と笑顔で語った。
(2006.5.10 民団新聞)