掲載日 : [2006-05-24] 照会数 : 11414
韓国版「ATOM」 今村ねずみさんに聞く
[ 韓国公演の模様
]
7000人動員
公演初日から手応え…寄せられる称賛の声
個性あふれる舞台で人気を博している日本のエンターテインメント・バラエティ・ショウの「ザ・コンボイ・ショウ」。その20周年を記念する韓国版「ATOM」公演が20日、ソウルで14日間にわたる舞台を終えた。全20公演で約7000人を動員、関心の高さをうかがわせた。出演した韓国人俳優7人のステージに、「期待以上のでき」だと話す「ザ・コンボイ」のリーダーで、自ら作・構成・演出も手がけ舞台にも立つ今村ねずみさん。31日から東京のル・テアトル銀座を皮切りに、全国11都市で開かれる日本公演でも、さらにパワーアップした舞台を楽しみにしている。
お互い信じ成功に導く
「彼ら素敵ですよ」。今村さんが開口一番に発した言葉だ。出演男性7人は昨年、韓国でのオーディションで、候補者約200人から選ばれた。3月から渡韓した今村さんが自ら稽古を付けた。 作品「ATOM」は、「ザ・コンボイ・ショウ」のスタイルを確立したといえる作品。芝居を軸に歌、ダンス、楽器演奏などを盛り込んだ2時間半ノンストップのパフォーマンス・ショウで、日本では1996年の初演以降、全国30カ所で公演し、観客8万人を動員したヒット作だ。
86年「ザ・コンボイ」の結成から20年。「走り出したら止まらない」の合言葉通り、今村さん自身もひたすら突っ走って来た。「20年も経つと生まれた子どもが大人になるみたいなもの。コンボイ・ショウ自体もそうだし、グループ自体もそういう時期にきている。自分は作り手として、作品は作品として一人歩きしてもいいかなと思っていた」
その矢先に舞い込んだのが、韓国側の要請による韓国公演だ。「公演をやっていただける方のもとに、作品を預けることを決めた」
今村さんの生み出す作品の土台にあるのは、61年から72年まで放映され、当時一世をふうびしたバラエティー番組の「シャボン玉ホリデー」。この番組を見て育ち、そしてブロードウェーのミュージカルやショウなどから具体的な舞台作りの影響を受けたという。今村さんはこれらの多彩な要素を結集、調和させ、独自のエンターテインメントの世界を開花させた。
だが今回、韓国側スタッフの一部から作品に対して、「日本的」だという一言をつけられた。「日本でも言われたことはなかった。僕が日本で生まれ育った日本人で、この作品が生まれたから。でもそれを別にしても分かってもらえないことは沢山あった」。思いもよらぬ指摘に困惑し、温度差を感じながらも諦めなかったのは、「コンボイ・ショウ」を韓国に伝えようという気持ちが勝ったから。
公演初日から手応えを感じた。観客からは称賛の声が続々、寄せられ、各メンバーのファンクラブが発足。ブログも立ち上がった。「彼らがコンボイ・ショウを愛してくれた。現場で僕も彼らを信じたし、彼らも僕のことを信じてくれた。彼らのコンボイ・ショウが見えたということが僕にとっては嬉しい」
メンバーたちから「アボジ」と呼ばれるほど慕われていた今村さん。帰国前、作品を託すと告げたとき、「帰るときに子どもを置いていく親がどこにいるんだと言われた。彼らはなんていうんだろう…」。この後、しばらく今村さんの言葉が途切れた。この間の思い出を「日本人同士でやったほど感じ得ないような絆とかひたむきさを、彼らは感じさせてくれた。彼らとはどこかでつながっていたんだなと思う。それは理屈ではなく、触れ合いのなかで感じ取れた」と語った。
帰国後、韓日の歴史問題に関する勉強を始めたと話す。「知らないより知った方がいい。それを知ったうえで韓国の方々と付き合うことは、それが一つの未来だと思う。そこから学ぶべきことは沢山ある」。韓国で「日本的」だと指摘された言葉の意味も理解できるようになった。
好調な滑り出しを切った韓国公演。31日から東京を皮切りに、全国11都市で日本公演が始まる。 「彼らと一緒に作り上げたコンボイ・ショウをぜひ、見てほしい。そこには韓国人、在日、日本人だからというのが一切ない。でもどこかでつながっているアジア人という感覚は分かってもらえると思う。そして韓国にこんなに素敵な若者がいるということを見せてあげたい」
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〈物語〉
哲学者を名乗る「デモクリトスの会」の6人の仲間たちが、「真夜中の詩人の会」を開くために倉庫に集まる。互いに詩集を持ち合い、己の存在をかけて同会を始めようとしたその時、謎の人物が突如現れた。戸惑う6人に、「お前たちのなかで俺は実在する」と言い放つ男。その後、その合い言葉の意味が明かされる。
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プロフィール
今村 ねずみ 北海道出身。高校卒業後上京し、夢の遊眠社を経て、1986年に赤坂のショウパブで出会った仲間と「THE CONVOY SHOW」を旗揚げ。以来20年間、「走り出したら止まらない」をキャッチフレーズにしたダンスや歌、芝居やコント、生演奏などを取り入れたエンターテインメント・ショウすべての作・構成・演出を手がけて、出演もしている。外部出演は、『ロッキーホラーショウ』『リトルショップ・オブ・ホラーズ』『蜘蛛女のキス』など。北野武監督の映画にも出演。
(2006.5.24 民団新聞)