掲載日 : [2006-05-24] 照会数 : 9138
無年金者救済 日本人と外国人は別?
[ 定住外国人の無年金者を排除し続ける厚労省側(右奥)にその根拠をただす当事者と市民団体 ]
排除の姿勢 色濃く
厚労省 法の谷間に放置20年
在日外国人障害者・高齢者の無年金問題の解決を求める複数の市民団体が24日、厚生労働省との話し合いに臨み、「一刻も早い救済」を求める10団体連名の要望書を手渡した。話し合いは20年前からほぼ毎年のように続いているが、厚労省側はなんら有効な経過措置を取ってこなかった。当事者団体からは「いつまで法の谷間に放置しておくのか」といらだちの声があがった。
国民年金法から国籍要件が撤廃されたのは82年のこと。しかし、在日韓国・朝鮮人の障害者に対しては、過去の不平等などを是正する経過措置が行われず、現在44歳以上の障害者と80歳以上の高齢者が無年金状態に置かれている。
国会では何度かの国民年金関連法の改正にあたっては、無年金定住外国人の救済に向けて「努力」ないしは「検討」の2文字が付帯決議に盛られてきた。年1回開かれる「在日韓国人の法的地位及び待遇に関する韓日アジア太平洋局長級会議」でも過去14回のうち、12回議題として取り上げられてきた。だが05年4月から施行された特定障害者に対する特別障害給付金支給に関する法律からも無年金外国人が排除された。
日本国民については沖縄、小笠原の本土復帰、中国残留邦人、北韓拉致被害者などに際してさまざまな経過措置をとってきただけに、あまりにも対照的だ。
厚労省は「社会保険方式」を強調、「掛け金を支払っていない以上はしかたない」という。これに対して龍谷大学の田中宏教授は「無拠出の福祉年金があるように、いまや国民年金法であって国民年金保険法ではない。税金を取るときは平等で、社会保障だけは国民から定住外国人の高齢者・障害者を除くというのはおかしい」と指摘している。
厚労省のいう「社会保険方式」の論理は崩れ去っている。これは、拉致被害者の夫である米国籍のチャールズ・ジェンキンス氏に救済措置をとったこと、さらに20歳前に障害を負っていれば、短期滞在者であっても日本に入国するや障害基礎年金が支給されている現実にも表れている。
22日、衆議院議員会館で行われた無年金当事者との話し合いで厚労省側は「外国人にのみ無拠出の年金を拠出するのは同様の立場の日本人との均衡上、難しい」と答えるにとどまり、一刻も早い救済を求める当事者との話し合いは最後までかみ合うことはなかった。
田中教授は、「結局のところ『日本人と外国人とは別』というのが厚労省の本音ではないか」という。
(2006.5.24 民団新聞)