掲載日 : [2006-07-06] 照会数 : 10061
北韓ミサイル発射・共同声明白紙撤回 各界の声
[ 北韓のミサイル発射を大きく報道する日本の各紙 ]
地域での共生に大きな支障
冷戦構造脱せぬ非民主的体質を露呈
理念なき和解は〞画餅〟
生活者が主導する和合を
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同胞の就職活動に支障
李民和さん(和歌山、学生、23)
総連との和合があまりにも唐突だった。地元の民団の顧問さんですら「テレビで知って驚いた」と語っていたから、団員皆が同じ状況だったようだ。
残念だったのは、総連との和合によって脱北者支援など民団ならではの事業が“棚上げ”されたことだ。誤解だったとしても、マスコミによって走り抜けたイメージは民団にとって大きな損失だったにちがいない。
実際、同胞学生の就職活動にも支障が生じただろうし、学生に少なからぬ不安を与えたと思う。
今回、北のミサイル発射が“後押し”して和合の白紙撤回になったとはいえ、和合そのものは今後も追求すべきだ。その際、条件を具体的に決めてからにしてほしい。
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総連との和合白紙も当然
金朋子さん(千葉、保母、27歳)
北のミサイル発射を契機に、総連との和合を白紙撤回したが、当然のことだ。もともと和解そのものに無理があったと思う。民団と総連とは、日本の地域における共存・共生をはじめさまざまな点で考え方に大きな違いがあるからだ。
今回の和合の進め方も問題だった。民団に対する評価が高かった脱北者支援問題を一時的にしろ“中断”したことには憤りすら覚えた。だれもが和合を望んでいるのは自明だが、決定する過程では多くの意見に耳を傾け慎重に決めてほしい。
最近、多数のマスコミに取り上げられたこともあり、日本の友人から「在日」に関する素朴な質問をぶつけられたのはうれしかった。
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和合は良いが慎重に進めて
水間敏隆さん(東京、「美術世界」支配人、46歳)
民団と総連が仲良くすることは良いことで、和合は有意義なことだ。しかし、民団内で混乱していたこともあり、北のミサイル発射を契機に白紙撤回したのはやむを得ないかなと思う。
私自身、在日の人とはつきあいが多いので、これからも慎重な姿勢で和合を進めるよう期待している。
日本人の場合、総連イコール北朝鮮というイメージで見がちだが、「帰国船」で北へ帰った在日の問題をはじめ、日本政府にも責任の一端があった歴史的背景など、日本のマスコミはもっと報道し、国民に理解を促すべきだと思う。
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信頼の蓄積後退を危惧
呉文子さん(東京、『鳳仙花』発行人、69歳)
拉致問題だけでも生きにくいのに、ミサイル発射はしてほしくなかった。私を気遣っているのだろうが、在日問題に関わる親しい友人からメールが入らない。何か目に見えない空気を感じる。本当にいたたまれない。これまで地域の活動を続けて前に進んだものが、後退するのではないかと危惧する。
5・17声明の白紙撤回は残念に思う。それは在日だけは一つにならなければならないとの願いが強かったからだ。在日が一つになるのは、権利や福祉問題などの解決に大きな力を生むからだ。白紙撤回が長い目で見ていいことなのか。在日の権利が一つひとつ崩されていくのではないか、厳しい状況になっていくような気がしてならない。
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在日考えぬ北韓に怒り
白玉仙さん(東京、カラオケ店経営、74歳)
北朝鮮のミサイル発射で在日同胞はますます肩身が狭くなる。私たちの立場がさらに苦しくなる。地域で生活していくうえで本当に困る。なのに北当局は在日のことをまったく考えていないことに憤りを覚える。
これまで在日が北にどれだけ多額の金を寄付してきたことか。私も以前、総連にいたからわかる。すごいお金を寄付したんですよ。
だから河団長が5・17共同声明を白紙に戻したのは当然ですよ。テポドン発射は平和を望む私たちの気持ちと時代に逆行する。武力で平和を威嚇するなど絶対に許されない。
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自主性ある和合・交流を
李清一さん(大阪、在日韓国基督教会館館長、64歳)
南北の指導者が歴史的な会談を行った2000年の「6・15」を契機に、地方では民団と総連の間のハードルが低くなっていた。それだけに、ようやく中央でも包括的な和合・和解の一歩が踏み出されるものと大いに期待していた。
北のミサイル発射という、この難しい時期だからこそ、民団と総連が自主性を発揮して和合・交流を深め、本国政府にいい意味の影響を与えるべきだった。白紙撤回は残念でならない。
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民族にとって利益ない行為
金賛汀さん(神奈川、ノンフィクション作家、69歳)
ミサイル発射は常軌を逸した愚行で、冷戦構造から一歩も脱していない北の非民主的な体質がそのまま出た。今さら軍事力を誇示する理由がどこにあるのか。わが民族にとって、何の利益ももたらさないばかりか、国際的に孤立し、愚弄されるだけだ。もっと知恵を働かせ、半島に前向きの貢献をすべきだ。
5・17については、民団、総連が仲良くすることはいいことだが、理念的なものを詰めていない共同声明は、「絵に描いた餅」で、もともと無理があった。
白紙撤回は残念だが、今回の経験と在日の基盤を生かし、福祉の問題など、在日全体の利益を追求する態勢をつくってほしい。
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「白紙」は試練再度機会来る
山崎順一郎さん(東京、月刊『韓半島』編集人、66歳)
在日と言っても一様ではなく、世代や所属の違いなどによって、様々な立場や考え方があると思う。その中で、せっかく民団と総連の両中央本部が、和合という形でまとめられた共同声明が、北のミサイル発射を契機に、白紙撤回となったのは残念だ。
ただ、この白紙というのは、一度くぐり抜けなければならない試練かもしれない。いずれはこのたびの試練を乗り越え、再び手をとりあえる時が来るものと、日本人の友人の立場から願う。
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支部レベルの交流は継続を
金奎一さん(埼玉、在日同胞の生活を考える会代表、68歳)
中央レベルでの和合交流は壊れはしたが、支部レベルないしは一般同胞が主導権を握った生活者レベルの和合はこれからも積極的に展開していくべきだ。中央がやめたから地方もやめろということはあってはならない。
いま、われわれが取り組むべき課題は、祖国の和合や統一を代弁することではない。我々と我々の子どもたちの生活をどうしたらよくしていくことができるのかだ。その点で5・17共同声明の内容は満足できるものではなかった。
さまざまな地方の総連支部ばかりか市民運動体も巻き込み、金融、子女の教育、老人対策など在日の利益の一点に絞って具体的な協力関係を築いていってほしい。
(2006.7.6 民団新聞)