掲載日 : [2006-07-24] 照会数 : 8635
共生の生野区、アジアに発信 サハリンでTV放映
[ 民団生野東支部会館で文煕元支団長(左)から共生の現状と取り組みを聞く片山通夫さん ]
日本人フォトジャーナリストが企画
民団支部にカメラ…鶴橋の民族学級にも
【大阪】大阪市生野区で日々、多文化共生社会づくりに取り組んでいる地域の在日韓国人の生活と意見が8月、サハリンでテレビ放映される。地元在住の日本人のフリーフォトジャーナリストで、この間一貫してサハリン在住の朝鮮族を映像に収めてきた片山通夫さん(61)が、「地域の共生をアジアに向けて発信したい」と取材、編集した。
片山さんがルポしたのは在日同胞の最多住地域として知られる生野区と東成区の韓国市場やコリアタウン街。取材は7月に数日間にわたって行われた。韓国語通訳は在日3世の金年泉さん(37)=奈良市在住=が手伝った。
民団生野東支部会館では文煕元支団長が地域同胞の現状を総括的に紹介した。共生の現状について質問に答えた文支団長は、民団会館を地域に広く開放し、囲碁教室や韓国語教室が日本人住民でにぎわっていると説明した。残された当面の課題としては地方参政権と高齢者・障害者の無年金問題を挙げた。
文支団長は「問題はあるものの、地域での共生に努力している。努力をやめてしまうと共生がストップしてしまう」とサハリン同胞へメッセージを送った。
大阪市立北鶴橋小学校では5年生の民族学級の現場にカメラを持ち込んだ。オリニはこの日、民族講師の郭政義さんからサハリンに置き去りにされた韓国人の歴史と現状について学んだ。最後は遠く離れた同胞を思いながら「アリラン」と「イムジン江」を合唱した。
郭さんは「子どもたちにとってサハリンは想像もつかない遠いところですが、そこに住む4万人の韓人たちに日本に住む子どもたちの明るい笑顔が伝わればいいと思います」と思いを語った。
収録を終えた片山さんは「仕事がらいろんな国を回ったが、他民族が地域で共生している事例としてここ生野区と東成区は一番成功しているモデルケースという実感がある。その地域共生の基礎は在日コリアンが100年間かけてつくってきたものだ。この地域活動をサハリンばかりか韓国、南京にも『日本のなかのアジア』として紹介していきたい」と抱負を語った。
サハリンでの放映はユジノサハリンスクとその周辺に住む視聴者が対象。ロシア語の字幕がつき、30分枠の番組で放映される。サハリンでも88年のソウルオリンピック以降、韓国への好感が増し、旧ソ連時代に厳然としてあった露骨な差別は改善の方向に向かいつつあるとされる。サハリン残留韓国人の社会的地位も飛躍的に高まりつつあるとされるだけに、放送されれば地域社会の共感を呼び起こしそうだ。
(2006.7.24 民団新聞)