コラム・特集 内容

 サッカーのW杯で、韓国チームの初戦が行われる前日の夜、釜山のリゾート地、海雲台にいた。

 そこは20年以上も前にアボジと訪れたことがあった。故郷からもさほど遠くなく、慶尚道なまりが通用する気兼ねのない土地だった。波の音と心地よい潮風を受けながら、親子水入らずでとりたての刺身に感激した思い出がある。

 80歳手前のアボジと再び祖国を旅することがあるのかどうか。老後の世話を先送りしている長男のほろ苦さも胸に迫ってくる。そんな感傷と、W杯をこの目で観戦できる期待とが一杯になって、アボジの声が無性に聞きたくなった。携帯で国際電話ができる便利な時代。弾むような声が耳元に響く。「なんで韓国人に生んだんだ」と暴言を吐いた息子の方が、祖国を訪れるようになった現実に、目を細めているのがわかる。

 「太極戦士」たちは対ポーランド戦を皮切りに、快進撃を始めた。そのたびにアボジに電話をかけた。亡国の民の悲哀を味わったアボジと植民者の土地で生まれた息子が一体感に包まれ、われ知らず高揚していた。仁川ではついに大型の太極旗を買い、わが身を包んで愛国歌を歌った。大観衆の声が会場を揺らした。

 「韓国人に生んでくれて誇らしく思うよ」。それほど韓国は、選手も国をあげての盛り上がりも素敵だった。この言葉をアボジに直接会って伝えたいと思っている。

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番号 タイトル 掲載日
33 サッカーアジアU14・韓国、日本に大勝し優勝 2002-11-11
32 プロ野球韓国シリーズ・三星が21年目の初優勝 2002-11-11
31 <コラム・布帳馬車>写真が語る「在日」の歴史 2002-11-07
30 <社説>今こそ「在日」を語り継ごう 2002-11-07
29 民団大阪・城東支部お年寄り無料で散髪(02.11.06) 2002-11-07
28 10月マダン 各地で「同胞の宴」続く(02.11.06) 2002-11-07
27 「分断」の痛み再確認 民団がソウルで統一研修(02.11.06) 2002-11-07
26 アジアユースサッカー 韓国が日本破り、10度目の王座に 2002-11-01
25 <コラム・布帳馬車>あるハルモニの返答 2002-10-30
24 <社説>北韓は即刻、核開発を放棄せよ 2002-10-30
23 北韓は「約束違反」 核開発の継続に憤り・在日同胞各界の声 2002-10-30
22 民族文化で競演20年 「子どもの集い」に48校・東大阪 2002-10-30
21 支部会館一部を改装 「街かどデイハウス」へ 2002-10-30
20 <社説>ペイオフ延期と同胞系信組の支援 2002-10-21
19 オリニからお年寄りまでが交流-10月マダン 2002-10-18
18 <コラム・布帳馬車>頑張れ「海外派」 2002-10-15
17 義援金3593万円に…本国台風助け合い運動 2002-10-08
16 永住外国人2人が投票 秋田・岩城町 2002-10-08
15 <社説>「拉致事件」の全容明らかにせよ 2002-10-02
14 韓日米で緊密連携 対北韓政策 2002-09-25
13 <社説>オリニ土曜学校を広げよう 2002-09-25
12 在日同胞社会・民団組織発展へ 2002-09-18
11 <コラム・布帳馬車>「オリニJ」成功秘話 2002-09-18
10 <社説>「参政権」で共生社会を実現しよう 2002-09-18
9 本国台風・被災者助け合い運動開始 全団をあげて展開 2002-09-11
8 <社説>本国台風被災者に同胞愛を送ろう 2002-09-11
7 笑顔、涙の5日間祖国でルーツ確認 2002-08-28
6 <社説>急げ、「京義線」の再連結 2002-08-28
5 <社説>無年金救済「試案」に欠ける視点 2002-08-21
4 <コラム・布帳馬車>メイドインコリアの実力 2002-08-21
3 <社説>在日として「誇り」を新たに 2002-07-31
2 <コラム・布帳馬車>アボジと息子のW杯 2002-07-31
1 <社説>武力挑発のりこえ和合と交流を 2002-07-17
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