掲載日 : [2006-09-06] 照会数 : 7913
祖国で舞台に 夢叶う 楊真娥さん
[ 「沈清」の1場面
]
韓国 ユニバーサル・バレエ団団員
楊真娥さん(20)
今年3月、韓国国内をはじめ海外各地で高い評価を得ている韓国を代表するユニバーサル・バレエ団の一員になった在日韓国人の楊真娥さん(20)。小学校時代、バレリーナになる決意をして以来、夢を叶えるために走り続けてきた。先月30日、東京を皮切りに全国11都市で始まった同団のグランド・バレエ「沈清」日本公演では、群舞のメンバーとして舞台に立っている。「バレエは人生そのもの」と語る真娥さんに話を聞いた。
世界のレベルに触発
努力が実り輝き放つ
今回、3年ぶりの来日となるユニバーサル・バレエ団の公演では、盲目の父親を助ける孝行娘、沈清を描いた民話をもとにバレエ化した「沈清」を上演。この作品は同団の代表的なレパートリーとして知られる名作だ。真娥さんは群舞のメンバーとして全3幕に出演。天女、貴婦人、盲目の老人役などを演じている。「舞台に出て楽しい」と語る笑顔が清々しい。
バレエとの出会いは7歳のとき。母の勧めで姉と同じ高木淑子バレエ・スクールに通った。5年生のとき、バレリーナになることを決意。同時に「自分を試してみたい」と小学校卒業後、海外のバレエ学校への留学を望んだが、まだ幼いからと両親に反対された。
一つの転機が訪れたのは高校1年生のとき。同スクールは毎年1回、ロシアのダンチェンコバレエ団の教授が1カ月間、生徒の指導に日本を訪れていた。海外留学の夢を持ち続けてきた真娥さんは、ダンチェンコバレエ団に短期留学することを決めた。「教え方が日本と違う。教授は生徒が分かるまで一生懸命教えてくれた。それまで日本しか知らなかった自分が初めて世界を知ったとき、もっと頑張らなければという気持ちがわいた」
その後、教授の勧めで高校卒業後、モスクワ国立バレエ・アカデミー(ボリショイ・バレエ学校)に入学。迷いはなかった。教授たちの厳しさ、稽古に対する情熱を目の当たりにした。
当時日本人クラスができるほど、多くの日本人が学んでいた。「それだったら日本で外国の先生に習っているのとかわらない。このクラスだけは入りたくないと必死で練習した」。そして最後まで諦めなかったのは、両親に対する思いがあったからだ。
「自分の夢を叶えるために物心両面にわたり両親に苦労をかけてきた。それを考えると涙が止まらなかった。やめると一言も言えない。だから成功して日本に帰ってくるという気持ちとプレッシャーを自分にかけてきた」。辛い気持ちを抱えながらも頑張り通し、クラス決めの試験で希望のクラスに入ることができた。
帰日後、数カ所のバレエ団を下見した。同時に韓国のバレエに勢いがあることを耳にしていた。そして「私は日本で生まれ育った韓国人。自分と同じ血が流れている人たちの前で踊り、在日の凄さを見せたい」という気持ちもあったと話す。
すでにオーディションは終わっていたが、幸運の女神も見方した。ビデオを送ってから1カ月後、入団決定の連絡が入った。現在、韓国で一人暮らし。入団から1カ月後の4月、「眠れる森の美女」公演に群舞の一人として参加、6月に行われた徳陽公演「沈清」第1幕にも出演した。「今まで自分なりに頑張ってきて自分の国で舞台に立てた。努力すればするほど、人間は輝けるものだと思った」
だが踊りで失敗すれば、すぐ評価につながる厳しい世界。「自分が努力するしかない。いいところは全部盗む。やらなければそれで終わり」。目指すのはソリスト、そして主役のプリンシバルだ。これから経験を積んで「ユニバーサル・バレエ団で信頼されるバレリーナになること、いなくてはならない存在になりたい」と、次の夢の実現に向けて踏み出している。
〈ユニバーサル・バレエ団日本公演日程〉
▽7日18時半=(長野)長野県県民文化会館・中ホール▽9日18時半=(愛知)愛知県芸術劇場▽12日18時半=(大阪)グランキューブ大阪▽14日18時半=(兵庫)神戸文化ホール▽17日18時半=(香川)香川県県民ホール▽18日18時半=(広島)広島郵便貯金ホール▽20日18時半=(福岡)宗像ユリックス。入場料S席1万円ほか。チケット・問い合わせはユニバーサル・バレエ公演事務局(℡03・5925・3795)。
(2006.9.6 民団新聞)