掲載日 : [2006-10-04] 照会数 : 7409
<鄭進中央団長 談話>創団60周年を迎えて
葛藤に終止符を打ち 再び力強く歩もう
親愛なる団員の皆さん。
昨3日は、民団の創立60周年に当たる記念すべき日でした。本来であれば、中央本部の主催のもとで、草創期の労苦に思いをはせ、歴史の重みを噛みしめて、民団の将来を語り合う何らかの催しがあるべきでした。中央事業のほとんどが遂行不能の異常事態下にある今はせめて、全国各地で開かれる「10月のマダン」が、60周年の喜びを分かち合う場となるよう、切に期待するところです。
前途はなお多難 気を引締めたい
しかし私たちは、60周年記念日を無為にやり過ごしたわけでは、決してありません。民主主義的な組織運営のもとで、人道と人権の尊重が第一義の共生理念を掲げる生活者団体として、再び力強く歩み出そうとする中で迎えたのです。これを可能にしたものこそ、歴史と伝統に支えられた民団理念の真髄であります。創団60周年とともに、まずはこのことを素直に喜びたいと思います。
同時に私たちは、多難な前途に改めて気を引き締める必要があります。今の民団には、癒さなければならない傷、埋めなければならない溝、補わなければならない損失があまりに多いのです。
河丙執行部を誕生させた第49回定期中央大会。民団を危機に陥れた総連との5・17共同声明発表。組織正常化のための挙団的な署名運動。そして、第50回臨時中央大会と続く過程は、民団史上でも類例のない葛藤の連続でした。
ことの本質は、河執行部の登場によってその正体を現した親北政治勢力に民団を委ねてはならない、という一点にありました。しかし、合法的に奪われた指導部を合法的に奪い返し、組織を破滅の危機から救うための手段は、団員自らが大会で選んだ団長を退陣させるほかありませんでした。
民主主義制度のもとでは、過てる選択をさかのぼって正すには、ためらいと激しい相克をともない、膨大なエネルギーを必要とします。それがいかに大義にかなったことであり、圧倒的多数の団員に後押しされたこととはいえ、その後遺症は小さくありません。
傷癒し溝を埋め 団員の心一つに
親愛なる団員の皆さん。
2回にわたる激しい選挙戦を含むこの8カ月の間に、悪質な怪文書や公けの場でなされた言説によって、特定個人やその周辺に対する誹謗中傷が乱れ飛びました。遺憾なことに、私たちの公器たる民団新聞までが虚偽の報道を行い、偏った論評を繰り返しました。多くの人格が傷つき、団員たちの間にいくつもの亀裂が入ったであろうことを思うと、心が痛みます。
無益に浪費された莫大な財貨を含む物心両面の損傷を、民団はいかに修復していくべきでしょうか。
民団史に厳しい教訓として残すためにも、5・17事態や河執行部の財政処理問題については、真相を糾明していくことになります。ですが、危機的状態を速やかに終わらせ、希望を託せる民団へと大きく舵を切るために、何より肝心なのは、傷を癒し溝を埋めて団員の心を一つにすることです。
対話を積極推進 組織強化を急ぐ
私は今後、全国団員の連帯感を高め、地方と中央の連携を密にするために、各種の対話を積極的に進めるつもりです。しかし、新執行部の出帆に際して一つだけ強調したいことがあります。
民主主義的な選挙制度であれば、勝者がいて敗者がいるのは当然です。ところがこの間、「負け組」という言葉が盛んに用いられました。しかもそこには、「反民団的」あるいは「団員にあらず」というニュアンスさえ込められていました。政治的・経済的な環境が厳しくなる日本社会で、弱者の立場にある民団社会をあえて二分するような、悪意に満ちた言説と言うべきです。
「負け組」という言葉は、絶対に使われてはなりません。それは、今回の選挙結果についてもまったく同じことです。この間の事態には勝者も敗者もなく、誰しもがその責任を免れません。民団そのものが敗者に転落することをかろうじて食い止めたに過ぎないのです。
私たち執行部は、年末年始の多忙な日程をはさんで、組織再生を短期間で成し遂げる使命を負っています。もとより私は、危機意識を一時もゆるめることなく、粉骨砕身努力する所存です。団員皆さんにも、幅広く積極的なご協力をいただきたく、改めてお願いするものです。
(2006.10.4 民団新聞)