掲載日 : [2006-10-18] 照会数 : 6775
<寄稿>北核問題 韓日はどう対応すべきか…李元徳
<寄稿>李元徳(韓国・国民大学副教授)
対北の共同目標持て 東アジア共同体も視野に
北韓問題は、解決の糸口さえつかめないまま、悪化一路にある。国連安保理は、7月のミサイル発射を機に対北非難決議を採択し、さる9日の核実験強行を受けては、憲章7章に依拠したより強力な制裁決議を採択するに至った。
核保有の既成化憂慮
ブッシュ政権は金正日政権を極度に不信し、事実上、体制変革を追求している。北の核・ミサイル開発を米国の対テロ・大量破壊兵器不拡散の戦略に対する全面的な挑戦と見なし、核・ミサイルの放棄と6者会談への無条件復帰を要求している。
金正日政権はこれに対し、米国をはじめとした国際社会の圧力に全面対峙する姿勢を崩さず、ミサイル発射や核実験を強行することで、米国を直接交渉の場に引きずり出そうとする瀬戸際戦術に固執している。このまま推移すれば、北の核兵器保有が既成事実化される憂慮が濃い。
韓半島の軍事バランスは一気に崩れ、東北アジアの安定と平和に決定的な打撃となる。韓国の国家信頼度は大幅に下落して、経済は致命的な痛手をこうむる。対北包容政策は全面的に見直され、日本、台湾、韓国へと核武装のドミノ現象さえ起きかねない。
北核問題に対して韓国政府は、核兵器は認めない、平和的に解決する、韓国が主導的な役割を果たす、との3原則を堅持してきた。
包容政策の見直しも
そのもとで、北韓に態度変化を促すべく、多様なチャンネルを通じて説得努力を続ける一方、米国に対しては金融制裁の緩和など、北が6者会談に復帰する条件を整えるよう強く要請し、日中ロなど関係国にも平和的な外交努力を求めてきた。
しかし、核実験の強行によって政府は、それによってもたらされるすべての責任は北韓にあると警告し、包容政策の全面的な見直しを示唆しただけではない。6者会談のみが北核問題を解決する場であり、米国には朝米直接対話の必要性を強調しながらも、国連の対北制裁決議には同調する意思を表明するまでになった。
北韓の核実験はまた、独島、歴史教科書、靖国参拝の3点セットによって悪化した韓日関係にも影響を与え、対北政策において両国の協調を促す効果をもった。
日本にも重要な役割
日本は北韓問題の解決に、重要な役割を負わざるを得ない。地政学的に見て北の急変事態は、日本に深刻な安保上の脅威をもたらすだけでなく、難民流入の可能性や在日同胞の存在なども考慮せねばならず、北韓体制の安定的管理は極めて重要な課題である。
また、北韓の対日請求権に関わる資金は、北経済再建の必須要素だ。加えて日本は、アジア諸国のなかで米国に最も信頼され、対米発言権も大きい。米日同盟を通じた日本の役割は至大である。
対北政策において、韓日の共同目標はどうあるべきか。とりもなおさず、韓半島と東北アジアの非核化であり、さらには北体制を改革・開放に転換させ、ソフトランディングを通じて、東北アジア地域の協力促進、東アジア共同体の建設を果たすことだ。
役割の分担可能に
そのためには、対北政策の温度差や接近方法の差異について、相互理解が必要になる。拉致事件に対する日本の姿勢を韓国は理解しなければならず、日本も離散家族問題を抱え、同族としての人道的な配慮を排除し得ない韓国の特殊性を、理解しなければならない。
韓日はアジアを代表する市場経済・民主主義国家として、自由・人権の基本的な価値観を共有し、米国の同盟国であると同時に、長期的には米中の覇権争いにおいて貴重な中間地帯を形成し得る。
両国は緊密な対話とコミュニケーションを通じて、対北政策に共同目標を設定できれば、役割分担も可能だ。19〜20世紀の東アジアに戦争と葛藤をもたらした日本にとって、21世紀の東アジアの平和構築を牽引することこそ、結者解之(自分のせいで起きた事態を自身の責任で解決する、といった意)の道でもある。
(2006.10.18 民団新聞)