掲載日 : [2006-10-18] 照会数 : 9088
北核廃絶へ声一つに 黙認の総連を批判
[ 北韓の核実験に抗議し座り込む核兵器廃絶広島平和連絡会議。12団体で構成し民団広島県本部の韓国原爆被害者対策特別委員会も加わっている(10日、平和公園内・原爆慰霊碑前で) ]
痛み知る在日だからこそ
北韓の核実験発表に在日同胞から抗議の声が上がっている。韓半島に緊張が激化すればそれは即、狭間に生きる在日同胞社会に跳ね返ってくるからだ。このため、批判の矛先は北韓の蛮行に沈黙を守り続ける総連にも向けられている。
反対声明放棄は核兵器支援では
鄭早苗さん(大阪、大谷大学教授)世界唯一の被爆国の植民地であったがゆえに被爆者になった在日コリアンは、核兵器に関して一歩も引けない立場にいる。
それゆえに北朝鮮の核実験に関して、朝鮮総連が反対声明を出すのは義務である。しかし総連が、核兵器所有を肯定する北朝鮮の外務省声明などを日本語で披露している現状では、総連が核兵器を支持していることになる。
今後不幸にして民族学校の生徒が暴行を受けるような事態になれば、総連としてはどう責任をとるのか。
世界中の非難後、核保有国と認められたインドやパキスタン型に北朝鮮もなるだろうと甘い考えをもっているようでは、総連はますます在日から見放されるであろう。
「核」を許すまじメメントヒロシマ
薜幸夫さん(民団鳥取県本部団長)広島と長崎では未だ多くの同胞が世代を重ねて病魔に苦しんでいる。「核」は在日にとって「世界のヒロシマ」「世界のナガサキ」の問題ではない。在日の問題であり、在日の痛みだ。「核」は植民地支配から戦争の惨禍を経て、その癒されぬ傷を負い生きる在日に刻まれたスティグマ(聖痕)だ。
その「核」の痕を、痛みを知る在日こそ叫ばねばならぬ。「核」を赦すまじ!メメント・ヒロシマ(ヒロシマを想え)!
北韓出身が恥ずかしい
匿名希望(71)=民団生野南支部団員=米国を相手にまるでシェパード犬にスピッツ犬が吠えているようなものだ。こういうことをすればするほど自分の立場を悪くし、世界から孤立していくのは間違いないのに、北はなにを目指そうとしているのか。狂気に刃物とさえいえる。自分自身、北韓出身者であることが恥ずかしくなる。
総連本部への抗議文提出も
金判洙さん(56)=民団東神戸支部支団長=在日韓国人がこの日本の地でこれからますます住みにくくなっていくような感じがする。総連の同胞とは地域レベルで交流を重ね、コツコツ和合を積み重ねてきているというのに。総連の本部へ抗議文を出そうとも思っている。
核容認論に悲嘆と哀憤
金里博さん(64)=京都、詩人=私は「北」の核開発も実験も保有も絶対反対の立場だ。だが、心の片隅では論理的にどこか容認する〃盲腸〃のような部分も持っていたように思う。「北」が宝刀を抜いたのを知ったいまは悲嘆と哀憤で胸が張り裂けそうだ。いまこそ私は自らの〃盲腸〃を切り出さなければならない。自己改造しないと、私はもう一歩も前に進めない。
拉致問題すら未解決なのに
厳正子さん(67)=婦人会和歌山県本部会長=偽ドル紙幣や拉致問題などがまだ解決されていないというのに……。総連は、北韓が今回の実験をしたことを真正面から受け止め、悪いことは悪いと、勇気をもって大きな声を上げてほしい。
子どもたちへ嫌がらせ心配
李正憲さん(55)=奈良・在日外国人保護者の会代表=緊張激化の度に在日コリアンに対する恣意的・意図的なバッシングが起こります。私たちの子どもたちを地域社会の相互信頼の力で守らなければなりません。子どもたちの未来には核も戦争も憎悪も不要です。
「在日」ゆえに平和こだわる
金薫さん(27)=大阪、会社員=私が在日3世のコリアンとして生きている事実は、戦争が生み出したことだ。人が人の人権を無視し、憎しみ傷付け合う行為は身を持って断固反対したい。北韓の核実験はアジアの、強いては世界の平和を脅かすかもしれない。戦争における負の遺産、「在日」であるからこそ声を大にして平和を訴えたい。
強硬論一辺倒には懸念も
北への不信は在日にも影響
金両基さん(評論家・比較文化学者) 北朝鮮は虚勢を張っているようにも思えたが、一方では過剰なほどチェミョン(体面)にこだわり、チュチェ思想によって武装された強靱な国体であるという過信が重なって暴発を誘発する危険性を感じた。
宣言が実行に移され、国連安全保障理事会の制裁に大きな支援国である韓国と中国が参加し、韓国の包容(太陽)政策の中止をもとめる声が国内で高まり、アメリカなどからも金剛山観光事業と開城工業団地事業をとおしての現金支払いがミサイルや核兵器開発資金になっているので中止するように言われている。事業の中止は韓国経済に大きな損失をもたらす。こうした北朝鮮への募る不信感が民団と総連との交流にも波及しかねない。
戦争危機回避へ政治的な妥協も
姜誠さん(48)=埼玉、ルポライター=金正日政権の先軍政治に反対する。北朝鮮は核開発を中止すべきだ。南北、在日の人々にとってよいことは何もない。
ただ、北に対して強硬論の一点張りもどうかと思う。非難を恐れずに言う。国連による制裁はやむをえないが、その一方で、今こそ国際社会は大胆な政治的妥協をすべきだ。核放棄の見返りを与えてもよいと思う。今回の核実験カードはこれまで北朝鮮が常用してきた瀬戸際外交とはいささか質が違う。あまり追い詰めすぎると危険だ。
さらに北東アジアにおいて、強硬の連鎖が起きることも憂慮する。
北と対話窓口閉ざさないで
孫美幸さん(立命館大学大学院社会学研究科博士後期課程)今回の北朝鮮の核実験を断じて許すことはできない。しかし、自ら“Arms Race”に参戦することにも反対である。その行き先には数多くの苦しみと暴力の連鎖しか待ち受けていないことを、日本に住む私たちは2度の世界大戦の経験から十分に学んでいるはずだ。
最後まで北朝鮮との対話のチャンネルを残し、その上で現実的な戦略を各国と協力してとる必要がある。何より東アジアの一市民として私たちが平和をあきらめず、冷静な判断をしていくことが求められている。
(2006.10.18 民団新聞)